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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百四十一話 困惑
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長でしょうか?」
フィッツシモンズ中佐が尋ねると元帥は首を横に振って答えた。
「総参謀長にはグリーンヒル中将、いえ大将が就くそうです。ヤン提督は大将に昇進しイゼルローン要塞司令官兼駐留艦隊司令官になります」

ヤン・ウェンリー……。第三次ティアマト会戦、イゼルローン要塞攻略戦で英雄と呼ばれた人物だ。元帥にとっては手強い敵といえる。元帥が考え込んでいたのはその所為だろうか。

「甘く見る事は出来ないですね。どうやら反乱軍も必死のようです」
ヴァレンシュタイン元帥が落ち着いた口調で話した。口調からは感情は読み取れない。元帥はヤン提督の事をどう思っているのだろう。無性に知りたくなった。

「どうしました、フィッツシモンズ中佐?」
元帥がフィッツシモンズ中佐を気遣った。私は気付かなかったが中佐は何か考え込んでいたらしい。

「いえ、ヤン提督を総参謀長にという発想は無かったのでしょうか?」
なるほど、知勇兼備の名将を前線指揮官としてよりも総参謀長にして全軍を指揮させたほうが良いと中佐は考えたのか。それにしても良いタイミングで訊いてくれる。元帥がヤン提督をどう考えているか分かるかも知れない。

「有ったと思いますよ。本当はそれが一番良いですからね。私は考えた上でイゼルローンに送ったと思います」
「?」

どういうことだろう? 一番良い人事案を取らないとは。反乱軍はシャンタウ星域の敗戦で余裕があるとも思えない。それなのに……、思わず疑問が口に出てしまった。

「閣下、何故反乱軍は最善の手を取らないのでしょう?」
元帥は私とフィッツシモンズ中佐の顔を交互に見ながら答えた。

「ヤン提督は今年の初めに少将に昇進しました。今回大将に昇進したという事は年内に三回昇進することになります。それに未だ三十歳になっていません。ヤン提督に対する周囲の反発はかなり強いでしょうね」
「……」

なるほど、負け戦続きなのに昇進している。それに未だ三十歳になっていない。異例の昇進だ、風当たりは強いかもしれない。
「総参謀長にしても反発を受けるだけなら、むしろ前線に送って自由に才腕を振るわせたほうが良い、そう考えたのだと思いますよ。受け入れられない最善の策など意味がありません」

そう言うと元帥はまた何かを考え始めた。異例の昇進、風当たり、元帥も同じような思いをしてきたのかもしれない。だから分かるのだろう。考え込む元帥を見ながらそんなことを私は思った。



帝国暦 487年10月10日   オーディン 宇宙艦隊司令部 エーリッヒ・ヴァレンシュタイン


ヒルダがこっちを見ている。どうも観察の対象にされているようで余り気持ちのいいものではない。しかし、今の時点でこちらに味方するという彼女の想いは無視できない。信頼を得たいという思
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