第一部
第三章 パステルカラーの風車が回る。
夜叉丸
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なんで皆拒絶する! なんでなんでどうして? 僕が一体どんな悪いことをしたんだよ!
混ぜ合わせられるのは一尾の、守鶴と呼ばれる彼の思い。殺しちゃえ殺しちゃえ。理由もなくお前を拒むような奴なんていらないイラナイ。
そして我愛羅はその酔っ払いを殺した。殺したということにすら気づけないまま、我愛羅は歩き続けた。道端、建物の柱によりかかった男性――カンクロウのよく似た男が腕を組んで立っていた。我愛羅の父、風影だ。
彼は何も言わなかった。けれど我愛羅はまるで彼に無言の内に責められているような思いで、逃げるようにしてその場を去った。
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――なんで僕だけ、化け物なんだ?
満月の夜だった。建物の最上階に腰をかけて、我愛羅は自分の顔を覆った。テマリもカンクロウも化け物じゃなくて、友達がいるっていうのに。なんで僕だけ?
――僕は、なんなんだ?
テマリやカンクロウを守る砂はないけれど、自分だけはいつも砂が付きまとう。感情的になると砂はいつも攻撃に回る。
夜叉丸、と我愛羅は泣いた。心の傷を治せるのはきっと愛情だけ。そういった夜叉丸の言葉が蘇る。町の人々は子供も大人も自分を恐れ、父でさえ自分をあまりよく思っていない。テマリとカンクロウも自分のことを畏れている。我愛羅の味方は夜叉丸だけだった。優しい優しい、夜叉丸だけ。
やしゃまる。泣き続ける我愛羅の背後で砂がはじけた。振り向く。砂がいくつかのクナイを絡め取っていた。振り向いた先で一人の忍びがたっている。彼の周りでクナイが宙に浮かんでいる。自分を殺しに来たのだと悟った。と同時に、喉の奥で怒りがはじけた。
――なんで僕が……僕ばっかり……っ!
彼が腕を振るうのと同時に、空に浮かんでいたクナイがこちらに向かって飛んでくる。それを砂が防ぐのに任せながら、我愛羅は掌を顔を隠した忍びに向ける。たちまち砂に捕らえられた彼が砂に包まれたままもがく。我愛羅が拳を握り締めた。
――なんで? ……なんで?――
血が迸り、男は悲鳴をあげる間もなく死んだ。人をまた殺してしまった。今までのように感情の高ぶりのせいではなく、今度は自分の意識を、明確な殺意を持って殺してしまった。なんで僕ばっかり。言いかけた声は地面に落下した男の指に吸い寄せられて、消えた。包帯を巻いた指。認めたくなかった。
額宛ての下からのぞく髪。偶然だと自分に言い聞かせる。震える指が男の顔を隠す布にふれる。だめだ、と心のどこかが叫ぶ。するり、と布が男の顔を離れる。
――さすが、ですね、……我愛羅さま――
死んだかと思われた彼はまだ生きていた。口から血を流し、額からも血を流した男が柔和な笑みを浮かべた。夜叉丸だ。受け入れたくない現実がどくどくと心臓を鳴らす。心が痛い痛い痛い痛いいたいいたいいたいいたいイタイイタイイタイ
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