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ソードアートオンライン 無邪気な暗殺者──Innocent Assassin──
OVA
〜暗躍と進撃の円舞〜
種族の憂慮
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過剰な戦力を持ち合わせているかって言われても自信はない」
ただこれは、もはや事実や真偽は関係ない。
そういう噂、そういう論が上がった時点で、集団の総意はそちらへ流れていくものだ。
空気を読まない
真実
(
リアル
)
より、少し納得する――――させられてしまうくらいの
噂
(
バーチャル
)
。民衆なんてそんなもんだ、と実際に民を率いる種族の長は言う。
「具体的には?」
しばし沈黙したアリシャは、「ここだけの話だヨ」と前置きした上で語り出した。
「……前々からちょくちょくアンチは見かけたけど、最近は酷いネ。運営への苦情メールも結構行ってるみたい」
「そないなことに……」
「ケットシーそのもののステータス低下か……最悪、テイムスキルの補正に下方修正が加えられるかも」
「な」
ヒスイは絶句する。
現在、ケットシーの誇る二軍――――ドラグーン隊とフェンリル隊を支えているのは、言うまでもなくテイムスキルに他ならない。
全種族中最高のテイムスキルへの補正あったからこその両軍であって、それへ下方修正が入れば、当然新米隊員が飛竜や巨狼を飼い馴らすことも叶わなくなり、隊は先細りにならざるを得ない。
もしそうなれば、あの《暗黒期》の再来になる。
「も、もし、そんな状況になったら……」
「ウン。十中八九、ケットシーは壊滅的なことになるだろうネ」
「ッ!」
しかも、ことはケットシー単体の話ではない。
現在、表向きとはいえアルヴヘイムが平和を保っているのは、ひとえにケットシー・シルフの種族連合が過激派であるサラマンダー勢の蓋として機能しているためだ。
もし仮にケットシーが瓦解するような事態になれば、当然なし崩し的に同盟を組んでいるシルフも崩れることだろう。もともと連合の理由の一端は、サラマンダーのシルフへの執拗なPKに対しての威嚇――――牽制もあったのだ。シルフだけでサラマンダーを押しとどめるのは不可能に近い。
そして蓋としての機能を果たせなくなった連合を無視し、またサラマンダーはシルフ領への嫌がらせ――――いや、もっと踏み込んで侵略を開始するかもしれない。何せ今まで散々頭から抑えられていたのだ。鬱憤もあるだろう。
そしてその行動に触発するようにして、各種族の戦争意識が表面化。
再びALOは、旧運営体時代の群雄割拠、戦国乱世に逆戻りになる。
「止めんとあかん……」
「もちろんダヨ、ヒスイちゃん。だけど、一度威力を持った意見っていうのは中々引くことを知らなくってサー」
どことなく疲れて見えるのは、実際そうなのだろう。
もうこうなったら選挙など些末なことだ。冗談や比喩抜きで種族、あるいはALOの今後の進退がかかっている。
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