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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百四十話 嵐の前
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ない人間が見たら元帥は本当に俺とフェルナー准将の関係改善を喜んでいるように見えるに違いない。いや、もしかすると本当に喜んでいるのか?

「今日、弁務官に来てもらったのはお願いがあるからです」
「お願いですか……」

お願い、その言葉に思わず身構えてしまった。そんな俺にヴァレンシュタイン元帥はおかしそうに笑いながら話を続けた。
「心配しないでください。そちらにとっても悪い話ではありませんから」
「そうですか」

思わず苦笑が出た。どうも目の前の青年は苦手だ。初対面が酷かった所為かもしれないが交渉相手に苦手意識を持つとは困ったものだ。

「それで、お願いとは何でしょう?」
「門閥貴族たちに武器、弾薬を売って欲しいのです」
「!」

門閥貴族に武器、弾薬を売る。どういうことだ、何を考えている。目の前の元帥は穏やかな表情のままだ。何かの罠か? だとすれば狙いは誰だ? 第一に門閥貴族、その次は俺か、フェザーンか……。

「しかし、売れといわれましても相手が有ってのことです。彼らが買いましょうか?」
俺はあえて当たり前の疑問を提示してみた。

門閥貴族たちは時期を待つつもりだ。今の時点で武器弾薬など購入するだろうか? 一つ間違えば謀反の嫌疑をかけられかねない。その危険を冒してまで武器購入に動くとも思えない。

「その心配はありません。彼らはもう直ぐ武器弾薬を欲しがります、もう直ぐね。そのために今から彼らに売り込んでおいたほうがいいでしょう」
うっすらと微笑みながら元帥が答えた。

もう直ぐ武器弾薬を欲しがる? つまり暴発する、暴発させるという事か。元帥は何らかの行動を起そうとしているようだ……。微笑みながら話す元帥にうそ寒いものを感じながら問いかけた。
「しかし、よろしいのですか。手強くなりますぞ」

「構いません。暴発させるのが先です。彼らも武器弾薬の当てがあれば動き易いでしょう」
「……」

「ボルテック弁務官、この件をフェザーンのルビンスキー自治領主に伝えればそれだけでも弁務官の株が上がりますね」
「そう、なりますな」

確かに上がるだろう。内乱勃発と武器弾薬の売り上げによる利益、しかし見返りとして何を要求されるのか?

「ところで、ルパート・ケッセルリンク補佐官の事ですが、調べはつきましたか?」
「……いえ、つきません」
「そうですか」

俺の答えにヴァレンシュタイン元帥は微かに頷いた。ルパート・ケッセルリンクがルビンスキーの息子だという元帥の情報の確認は取れていない。調べたいのだが頼める人物が居ないのだ。頼んだ瞬間にルビンスキーの耳に入りかねない、そう思うと迂闊に動けない。

「弁務官、これを」
元帥が書類ケースから文書を取り出し俺に差し出した。受け取り、文書を読む。内容は言
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