第二部 WONDERING DESTINY
CHAPTER#5
TOWER OF GREY〜Illegal Needle〜
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得ます…… “虫” のカタチをした 『スタンド』 」
男の声に少女の背後に座っていた、中性的な美男子が応じる。
その次の刹那。
無頼の青年の超近距離で響き渡る、奇虫の耳障りな羽音の唸り。
「承太郎ッ! おまえの顔の横!!」
少女の叫ぶような声と同時に己の左方へ視線を向けた美貌の青年の眼前に、
おぞましき奇虫の裏面が蠢いていた。
世界最大のクワガタ、ギラファ・ノコギリ・クワガタすらも
遙かに凌駕する奇虫のサイズ。
巨大な顎を暴虐的にガギガギと何度も交差させ、
その下唇肢から淀んだ灰色の体液を断続的に滴らし、
更にその内部から節くれ立った階層状の “触針” を剥き出しにする、
生命の幻 像
荒廃した「本体」の精神をそのまま具現化したかのような、
醜貌なるスタンドの姿。
(気味悪ィな……)
眼前の超至近距離で迫った奇虫に対し、眉一つ顰めず無頼の貴公子が
心中で想った感想はソレ。
そして青年は鋭い視線でそのおぞましきスタンドを睨め付け、
即座に戦闘体勢へと移行する。
「ここはオレに任せろ。ジジイもシャナも手出しは無用だ」
醜悪極まる姿をしているとはいえ、
あくまで戦闘の基本は正々堂々一対一。
その矜持の許ゆらりと奇虫に向き直った青年は、
己がスタンドを繰り出す為に精神を集中する。
「気をつけるんだ。スタンドだとしたら、“人の舌を好んで喰い千切るスタンド使い”
がいるという話を昔聞いたコトがある」
「……」
背後から告げられた花京院の言葉をしかと耳に留めながら、
青年は軽く立てた左手の親指をそのまま鋭く己の美貌の側面へと掲げる。
『星 の 白 金ッ!』
勇壮なる叫び。
空間の歪むような異質な音と共に、突如青年の右腕からもう一つの屈強な腕が出現し、
瞬時に彼の背後に現れた勇猛なる人型のスタンドが鋼鉄すらも容易く両断する、
峻烈なる手刀を音速で奇虫に繰り出す。
しかし。
ソレが触れるよりも遙かに疾く、奇虫は空間に残像を遺して眼前から消え去る。
「!」
「!?」
「!!」
頭上で、再び耳障りなスタンドの羽音。
奇虫は淀んだ体液に塗れた剥き出しの触針をスタープラチナに向けながら、
スタンドの死角の位置で変わらぬ挙動のまま佇んでいた。
「躱した……!? 信じられないッ!
目の前で発射された弾丸さえも掴み取れるスピードが在る
スタープラチナよりも、更に疾いッ!」
眼前で刹那に繰り広げられた驚愕の音速攻防に、少女はその双眸を見開く。
「このスピード、そしてこの幻 像、間違いない。
やはり “ヤツ” だ。タロットでの 「塔のカード」 破壊と災害。
そして旅の中止の暗示を持つスタンド……」
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