第二部 WONDERING DESTINY
CHAPTER#4
DEPERTURES 〜旅立ち〜
[9/11]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
」
ゆっくりと、淑女はその瞳を閉じていった。
再び闇の中へと戻る為に。
微かに動いた口唇。
最後に何と言ったのか?
“大丈夫” それとも “心配しないで”
何れにしても、淑女はその最後の最後の時まで。
意識の途切れる寸前まで。
自分に優しく微笑みかけてくれていた。
(――ッッ!!)
少女の胸中で弾ける、万感の想い。
万言を尽くしても表現出来ない程の、純粋な感情。
もう何も言わないで!
静かにずっと眠っていて!
今度はもう逃げないから!
今度はきっと最後まで闘い抜いてみせるから!
アイツと一緒に!
だから。
だか、ら……!
死なないでッッ!!
“お母さん……!”
どこをどう歩いたかは、覚えていない。
気が付けば、自分の部屋でただ一人、朽ちた枯れ木のように佇んでいた。
未だ胸中で激しく逆巻く、無数の負の感情。
震える口唇で少女はソレを、自分自身に叩きつけた。
「何が…… “フレイムヘイズ” よ……ッ!」
いとも容易く口から零れる、今まで自分のスベテだったモノを否定する言葉。
「何がッ! “炎髪灼眼の討ち手” よ!!」
己自身を拒絶する言葉。
「私は!! 自分の大切な人一人!! 護る事が出来ないッッ!!」
紅涙と共に、空間に吹き乱れる哀切の叫び。
少女の脳裡に、幾つかの人間の姿が過ぎった。
護りたかった者。
護れなかった者。
何かしてあげたかったのに、何もしてやれなかった人。
そして。
その人達と織りなした、平穏なる本当に 「幸福」 だった日々。
ソレはもう、この世には存在しない。
跡形もなく灰になり、次元の遙か彼方にまで消し飛んでしまった。
ゴ、ボォ……
(ッッ!?)
不意に、少女の躰の裡で、ナニカが沸いた。
下腹部の底の方から、突如熱が噴いたように。
ソレは動悸と共に、全身に拡がっていく。
熱、い。
フレイムヘイズに変貌したワケでもないのに。
全身が脈動するほど、己の存在が煮え滾っている。
コレは。
コレ、は。
“怒りだッ!”
そう。
スベテの元凶で在る、“アノ男” に対する、抑えようにも抑えきれない、
途轍もなく凄まじい怒り。
アノ男は、私の大切なものを、次々と奪っていく。
まるで侵略するかのように。
誇りも、絆も、何もかも。
やっとみつけた、自分の 『居場所』 さえも。
何もかもスベテ奪われる。
「……ぅ……ぐぅぅぅ……!」
身悶えするように、少女は呻いた。
ここまで激しい怒りを感じたのは、
こ
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ