第二部 WONDERING DESTINY
CHAPTER#4
DEPERTURES 〜旅立ち〜
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度も感じたコトの無い焦燥が胸を突く。
それでも無理に起きあがろうとするホリィを何とか宥めて、
伏せる淑女の傍らに少女は付いた。
「本当に……ごめんなさいね……この十年ばかり……
大きな病気を……した事は……なかったの……だけれど……
もう……私も……歳……なのかしらね……? フフ……フ……」
消え去りそうなか細い声でそう言葉を紡ぐ淑女の風貌は、
神聖でこの世の何よりも美しい。
一度、ホリィと一緒に買い物に行った時、
洋菓子店の若い女性に 「キレイなお子さんですね」 と言われたコトを想い出した。
理由は解らないけれど、とても嬉しかったコトも。
でも。
それも、もう。
「……」
今にも泣き出しそうな表情で自分を見る少女に淑女は、
「そんな……心配そうな……顔……しなくても……大丈夫……
シャナちゃん……みたいな……優しい子が……お見舞いに……きてくれたンだから……
きっと……すぐに……良く……なるわ……きっと……きっと……」
儚くも優しい笑顔でそう言った。
「……ッ!」
嘘だと、想った。
己を蝕む呪縛の苦悶から、
ソレがちょっとやそっとで完治するモノではないと知っている筈。
コレはスベテ、自分に対するモノ。
窮地に瀕していても、他人を想い遣って已まない。
この人の。
優しい嘘。
「……ッ!……ッ!」
少女は知らぬ内に、己の拳を握っていた。
自分自身に対する途轍もない罪悪感が、己の裡で拡充していくを感じた。
そんな 「資格」 は、ない。
自分に、この人から、こんなに優しい言葉をかけてもらえる 「資格」 は。
この人を呪縛の苦悶に陥らせる 「一因」 は、他でもない自分に在るのだから。
その俯き細い輪郭を振るわせる少女にかけられる、憂いの声。
「どうした……の……? シャナ……ちゃん……?
どこか……痛いの……? もしかして……伝染っちゃったの……かしら……
アラ……アラ……困った……わね……」
この期に於いても自分のコトを慮り、
ただの風邪だと信じさせようとしている優麗の淑女。
本当は、話す事さえ苦しい筈なのに。
ソレでも。
ソレ、でも。
(ッッ!!)
もう矢も盾もたまらず、少女は淑女にしがみついていた。
もうそうする以外、自分でもどうしたらいいか解らなかった。
ソレと同時に少女の裡で爆発する、
渦巻く無数の感情の束。
私がアノ時逃げなかったら!
私があそこでアイツを討滅してたらッ!
貴女がこんなに苦しまなくてすんだ!!
貴女がこんなに傷つかなくてすんだ!!
心中で張り裂けるように迸る、少女の裡の声無き声。
想っても、仕方のないコト。
“アノ時” の、 少女とDI
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