第二部 WONDERING DESTINY
CHAPTER#4
DEPERTURES 〜旅立ち〜
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上げてきた己の力が、
肝心な時には何の役にも立たないコトを痛感しながら。
今まで 「強さ」 だと頑なに信じていたモノは、
実は 「強さ」 でもなんでもなかったというコトを実感しながら。
胸中に渦巻く感情の奔流。
ソレを抱えたまま少女は邸内を駆けた。
「……」
特に意図したわけではないが、気がつけば自分が立っている場所は
ホリィの寝室の前だった。
内部に人の気配は感じられない。
おそらく絶対安静の容体なので、僅かな差し障りもないよう
用務の時以外は別の間に控えているのだろう。
可能な限り音を立てないように、風靡な装飾の入った引き戸を開け
少女は足音を立てないように中へ入る。
「……」
畳敷きの大広間。
藺草の独特の匂いが仄かに香る、
薄明るい行燈を模した電気スタンドのみが光源の、
その部屋の中心にホリィはいた。
音もなく、吐き出される呼吸音にも細心の注意を払って、
少女は淑女の元へと歩み寄る。
淑女は微かな寝息と共に、静かに眠っていた。
暗がりの所為か、それほど顔色が悪いようには見えない。
しかし。
その脇に設置された無数の大形な医療器具が、
一定の間隔で無機質に吐き出され続ける電子音が、
幾本もの透明な管を伝って腕に注がれる有色無色の液体が、
彼女の容体が尋常成らざるモノで在るコトを否が応にも再認識させる。
「……」
微かに潤んだ瞳で、少女は淑女の躰には触れず、
かけられた羽毛布団越しにその小さな手を置く。
「……いってきます」
一言。
ただソレだけを告げて、シャナはホリィの傍を離れた。
いつかきっと、“ただいま” と言う為に。
いつかきっと、“おかえりなさい” と言って貰う為に。
その光景、を。
自分が本当に本当に幸せだった時の光景を、
一度閉じた双眸で深く想い起こしながら、
少女は引き戸に手をかけた。
「シャナ……ちゃん……?」
(!!)
消え去るようなか細い声が、シャナの耳に届いた。
超人的身体能力を持つ彼女でなければ、聞き漏らしていた位小さな声。
咄嗟に振り向いた視線の先。
震える細い輪郭の元、ホリィが己の身を引き起こそうとしていた。
「わざわざ……お見舞いに……きて……くれたのね……ありが……とう……」
「起きあがらないで! 顔を見にきただけだから!
すぐに出て行こうと想ってたから!」
即座に再び淑女の傍に戻り、悲痛な声で叫ぶ少女。
「大……丈夫……お薬が……効いて……大分……よく……なったわ……
せっかく……シャナ……ちゃんが……」
「いいから! 寝てて! 話なら、それでも出来るからッ!」
淑女の言葉を途中で切り、再び悲痛な声で叫ぶ少女。
今までの歴戦の最中でも、一
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