第十一話 良家の子弟の強み
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」
「詳しく聞こう」
身を乗り出してきた校長に俺は用意しておいた資料を提示した。
「来週行われる装甲擲弾兵の戦技トーナメントの観戦に公子をお誘いするつもりです。同級であるレーリンガー男爵家のルーカス公子も手紙を書いてくださるそうです」
「なるほど、同じ男爵家嫡男であるレーリンガー生徒からの誘いがあれば、断りはすまい。装甲擲弾兵の優れた力量を目の当たりにすれば、ツィンマーマン生徒も己の未熟を悟るだろう」
シートから身を乗り出した校長はルーカスの行動が俺の仕込みであることはすぐに気付いたようだったが、成り上がりの俺が『単独で行動せず、しかるべき人物の助けを求めた』ことに気を良くしたのかその点については何も言わなかった。
承認を得た。俺は小さくガッツポーズすると、心の中で快哉を叫んだ。これで貴族限定だが、役に立ちそうな奴をチームに引き入れることができる。ホルストたちについては別の口実を作る必要があるだろうが。
『ね、言ったとおりだろう?』
『ああ…先達の言うことは聞くものだな』
ごく小さな動作を目ざとく見つけたらしく、校長たちに見えないようこっそり片目をつぶってウィンクしてきたブルーノに、俺は内心舌を巻きながら答えた。
脳裏に昨日の出来事が浮かぶ。
「まずは話しやすい相手から話した方がいいと思う。マルカード…ルーカスがいいだろう」
ルーカスを仲間に引き込みオイゲン公子に手紙を書いてもらうというのはブルーノの案だった。ブルーノは生真面目で友好的かつ温厚な性格から友達も多く、一門はもとより一門外の貴族や家臣からも好かれており、あちこちの家の情報に通じている。俺と一緒にお館様の側近として特別教育を受けているだけでなく生来の貴族として学び、貴族社会の知識も豊富である。だがそれを活用する思考法にも優れているとは思っていなかった。
「なぜルーカスなんだ?あいつの説得で出てくるような傲慢さなら、とっくに出てきているだろう」
当初俺は休暇の間に調べた情報、地上軍の名門としてのツィンマーマン家の歴史とオイゲン公子の力自慢かつ自信家な性格を利用して、剣術あるいは格闘技の教師の助手として屋敷に乗りこみ叩きのめして怒らせ、引っ張り出すつもりでいた。
コルネリアス一世の大親征当時まだ黄金拍車の騎士だった当主が装甲擲弾兵副総監として元帥杖を与えられ随行し、超合金製の槌を振るって共和主義者の兵士をなぎ倒した功績で男爵を授けられたというツィンマーマン家の人々は揃って自信家揃いであるらしい。ならば、怒りで誇りを燃え上がらせるのが最も早く、なおかつ元の体たらくに戻ってしまう危険も少ないだろう。
怒らせるための段取りもなだめる段取りも、必要な人材も考えてあった。
だがブルーノは俺の計画を性急だと断じた。
「そこさ」
疑わし
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