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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百三十六話 五箇条の御誓文
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合が殆どだが、それでも人道的な側面も持つ事も確かだ。原作でもラインハルトは同盟が人道を持って捕虜交換に応じてくれたと感謝を言葉にしている。
言ってみれば、これは相手を信頼して行なう一種の紳士協定だと俺は考えている。互いに人道的に行動しましょう、反則はなしですよ、そういう事だ。それを内部分裂に使う……、人道って何だ、さっきの感謝は何なのだ、そう言いたくなるのは俺だけだろうか。
バグダッシュは内乱がラインハルトによって引き起こされたものだとヤン・ウェンリーに言われても信じなかった。俺はバグダッシュが甘いとは思わない。いや、甘いのかもしれないが人としては正しいし、誇りに思って良いと思う。
むしろこんな策を考えたラインハルトやオーベルシュタイン、策が実行される前に見抜いたヤン・ウェンリーの方が異常だ。ヤン・ウェンリーが軍人という職業を嫌ったのは自分が異常だと気付かされることがあったからだと思うのは考えすぎだろうか。
トリューニヒトの同盟政府がラインハルトを選ばなかったこと、亡命政権を交渉相手に選んだのも単純に判断ミスとは言えないのではないだろうか。
原作の同盟政府が、帝国内で行なわれている改革に気付かなかったとは思えない、いやそんな事はありえない。だとすれば改革者としてのラインハルトに対して好意を持ってもおかしくない。
しかし、彼らは亡命政府を交渉相手に選んだ。何故か? 理由は焦土作戦と捕虜交換だと思う。同盟政府の常識に照らしてみれば、焦土作戦や捕虜交換を利用した内部分裂などどちらも有り得ない事だった。
つまり、同盟政府はラインハルトを信じられなかったのだと思う。その事が彼らにラインハルトを拒否させた……。むしろヤン・ウェンリーがラインハルトを高く評価し続けたほうがおかしいとも思える。
焦土作戦を取ったラインハルトを何故ヤン・ウェンリーは高く評価するのか……。同じ資質を持っているからではないのか……。同盟政府がヤン・ウェンリーを査問にかけたのもこう考えると単なる嫌がらせとは思えなくなる。
同盟の軍事介入を防ぐだけなら、俺の言ったように一年後の交換で十分だ。もしそうしていれば、同盟政府は亡命者を受け入れなかったのではないだろうか。ラインハルトは同盟が自ら滅亡の道を選んだと考えていたが、選ばせたのはラインハルト自身だろう。
帝国にもラインハルトを危惧する人間はいただろう、カール・ブラッケだ。彼がラインハルトに対して批判的だったのもラインハルトの資質に信じられないものを感じたからだろう。
彼はラインハルトの改革も所詮は権力奪取の一環で権力基盤が安定すれば改革者の顔を捨てるのではないかと考えた。改革者が圧制者になる、つまりラインハルト・フォン・ローエングラムが第二のルドルフになる……。
ラインハルト晩年
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