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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百三十六話 五箇条の御誓文
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上手くいっていない。ケスラーはラインハルトの参謀長を一時務めたのだ。本来なら彼が別働隊に入ってもおかしくない。

それなのにケスラーは選ばれていない。シャンタウ星域の会戦でもケスラーの位置はラインハルトから離れた場所にあった。意識してやったわけではあるまい。だから却って始末が悪い。

本来ならケスラーは宇宙艦隊の総参謀長になってもおかしくなかった。だが第三次ティアマト会戦でラインハルトとの間に指揮権問題で隙が生じた。あれ以来二人の関係はおかしくなっている。

メックリンガーも同様だ。あの戦いでラインハルトとの間に距離感を生じている。本来ならメックリンガーもケスラー同様、宇宙艦隊の総参謀長が務まる男だ。

だがその二人を総参謀長に出来なかった事がラインハルトの今を作り出している。どちらかを総参謀長として傍においておけばイゼルローンの敗北は無かっただろう。今も宇宙艦隊司令長官だったはずだ。

おかげで俺も苦労している。俺があの二人のどちらかを総参謀長にすれば、政治面を重視するならケスラーを、軍事面重視ならメックリンガーを選べば副司令長官のラインハルトと何処かでぶつかるだろう。それを防ぐために俺が動くとなれば、それが原因で俺が疲れてしまう。総参謀長を置いても置かなくても負担は一緒という事になる。

その結果、俺は総参謀長無しでやっている。ワルトハイムはあくまで俺の艦隊の参謀長で宇宙艦隊の総参謀長ではない。

ラインハルトの欠点だ。自分に批判的な人間を傍においておく事が出来ない。ケスラーもメックリンガーも冷静な男だ。原作でもラインハルトに対して冷徹と言っていい観察をしている。

この世界ではそれがより強く出た。ラインハルトは二人が自分に対して批判的だと感じたのだろう。だから遠ざけた。常に傍に自分を肯定するキルヒアイスがいる事の弊害だ。

別働隊の連中には苦労をかける事になる。後でねぎらってやらんとな。特にミュラー、あいつは最年少だし、人が良いし苦労を自ら背負い込むような所がある。多分あいつらはゼーアドラー(海鷲)にいるだろう。後で行ってみるか……。

ラインハルトの欠点はもう一つある。実戦指揮官としての性格が強すぎるのだ。あるいは武勲を上げる事に固執しすぎるのかもしれない。つまり結果重視、勝てば良いという考えを露骨に出す。

今日もそれが出た。捕虜交換で内乱を起させようとか、得意そうに言いやがる。もう少しでお前何考えてるんだと怒鳴りつけそうだった。腕を叩いて落ち着かせたが。

転生する前は捕虜交換を利用した内部分裂工作にそれほど強い嫌悪感を抱いていたわけではない。いやむしろ嫌悪感など全く無かった。しかし、この世界に来てかなり考えが変わった。

捕虜交換だが、これは通常何かしらの政治的な理由や目的があって行なわれる場
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