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STARDUST唐eLAMEHAZE
第二部 WONDERING DESTINY
CHAPTER#2
SCARLET MIRAGE
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地上デジタル放送のスポーツチャンネルでも観て
時間を潰すコトに成りそうだ。
 涼やかな初夏の宵。
 訓練で(ほて)った躯を宥める為に、静かに過ごしたい処。
「それにしても、 『例のモノ』 って一体何なんだろうね?
彼女の様子からすると、何かとても重要なモノらしいけど」
 特に気に掛かったわけではないが無言でいるのもなんなので、
世間話がてら花京院が承太郎に問いかける。
「さぁな。 “例の” パンかなんかじゃねーか?」
 承太郎の方もなんとはなしにその質問に応じる。
「パン?」
「あぁ。アノ甘ったるくて、堅ぇンだか柔らけぇンだかよく解らなくて、
『メロン』 とは名ばかりの “アレ” だ」
「詳しいじゃないか?」
 少しだけ瞳を澄ました花京院が冷めた口調で問う。
「そりゃあ行く先々で10個以上も喰わされりゃあな。
不味いたぁ言わねーが、どうもオレの口には合わねー。
でも喰わなきゃ喰わねーであのヤローは」
 そこで承太郎の歩みが一度止まる。
 そして真正面から視線を合わせる、若き眉目の 『スタンド使い』
「……」
「……」
 件の戦いが終わってから、その最初の日曜日。
 ジョセフとホリィの(熱烈な)勧めで自分の住むこの街を、
シャナに案内したコトが在った。
(いま想えばアノ時の二人の笑顔が妙に造りモノめいていた気がする)
 行きつけのショップや生活必需品が揃っているモール、
空気の綺麗な森林公園や地元の名所等を紹介している時は
少女も静かに応じていただけだったのだが、
道すがらメロンパン専門の屋台や自営業のパン屋をみつけると
必ずそこへつき合わされた。
 そして紙袋から溢れるほどのメロンパンを抱えて戻ってきた少女と共に、
アスファルトに備え付けのベンチで小休止。 
 この行為が計5回繰り返された。
 甘いモノは苦手だと確か少女に明言していたと想うが、
そんな記憶は異次元世界の遙か彼方にまで飛んでいたのか
一度の例外もなく少女にパンを勧められ、
ソレへ否応も無しに応じるコトを余儀なくされたアノ時の自分。
 何分少女が(非常に稀なコトに)自腹で買ってきたモノである上に、
パンを勧める笑顔が余りにも純粋で無垢だった為
断るに断り切れなかったのだ。
 清楚なプリンセス・ワンピースにその身を包んだ小柄な美少女の隣で、
ラフな学ランを着た長身の男が苦々しい顔でメロンパンを(かじ)っていた図は、
(はた)から見ればさぞや異様に映ったコトであろう。
 通報されなかったのが不思議なくらい。
 麗らかな陽春の花片に彩られた、甘いながらも苦い記憶である。
「……」
“そのようなコト” を素面(シラフ)(そうでなくても)で花京院に話せるわけもなく、
逆に眼前に位置する中性の美男子
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