第二部 WONDERING DESTINY
CHAPTER#2
SCARLET MIRAGE
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しゅくしゅく》と頂戴するが良かろう。
ソレを無に帰すような所行は赦されんぞ。花京院」
静かだが、有無を言わさぬ強い口調でアラストールが、
「一人暮らしなんでしょ? おまえ?
だったら用意の手間が省けていいと想うけど」
その上で再びシャナが素っ気なく言う。
「……」
食事に招かれる物言いとしては、随分とまた高圧的且つ淡々としたモノだが、
自分がこのまま同道するコトに二人(?)の異議はないらしい。
しかし美貌の淑女お招きとはいえ、
その好意に甘えて気安く乗ってしまって良いモノだろうか?
生真面目な性格故に逡巡する花京院に向け承太郎が、
親指を立てソレを流す仕草で 「いこうぜ」 と促す。
「今日の訓練内容を整理しておきてぇ。夕飯でも食いながら話そうぜ。
“仕上げ” も御破算になっちまったコトだしよ」
「……」
その、少女以上に素気ない仕草と言葉。
でもただソレだけで、胸の裡の葛藤はウソの消え去ってしまう。
「何よ。私が悪いっていうの」
押し黙る花京院の下から、据えた視線で見上げるように自分を睨む少女に対し、
「さて、な」
承太郎は口元に少しだけ邪 な微笑を浮かべ、
両手をズボンのポケットに突っ込んだまま先に行ってしまう。
「こら、待ちなさいおまえ! 逃げるなぁッ!」
少女もブーツの踵を鳴らし駆け足でその後を追う。
「……」
花京院もやがて口元に穏やかな微笑を浮かべ、二人に続く。
夕闇に沈みゆく太陽。
その残照が坂の上の三つの影を、どこまでも遠くへと延ばした。
【4】
「おお、戻ったかシャナ。 “例のモノ” 届いておるぞ」
玄関先で編み上げブーツの、幾重にも交差した革紐を丁寧に解いていたシャナに、
居間のドアを開いて出迎えたジョセフが背中越しに声をかけた。
「ホントッ!?」
嬉々とした表情で頑健な躯付きの老人へ振り返った少女は、
靴を脱ぐ間ももどかしいのかそのまま両足からブーツをすっぽぬけさせて、
檜張りの廊下を走っていってしまう。
少女が無造作に中空に放ったブーツが宿主の脳天と顔面、
それぞれに直撃しそうになったので素早く出現したスタンドの腕が
ブーツを掴んでガードする。
「……」
「……」
どうやら、意識的なスタンド操作を心掛けるコトによって
本能的な反射運動等もソレに付随して向上しているようだ。
想わぬ発見だったが認識した事態もまた想わぬモノだったので、
コレでいいのかと二人のスタンド使いは微妙な表情のまま顔を見合わせる。
そのまま無言で少女のブーツを玄関先に置き、
二階の承太郎の私室へと歩みを進める。
夕食が準備されるまではまだ多少時間があるので、
この後は部屋で話をするか、
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