第二部 WONDERING DESTINY
CHAPTER#2
SCARLET MIRAGE
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(シャナの躰に触れていないと数秒で消滅する)
持続力−D 精密動作性−E 成長性−???
【3】
夕闇に沈む街を見下ろしながら空条邸へと続く
長い坂道を昇る帰路は穏やかなものだった。
激しい訓練内容によって付いた傷痕は自在法で消し、
更にアラストールの放った “清めの炎” で肉体を浄化した為
3人の姿はいま、その全身を聖水で清めたかのような汚れ無きモノとなっている。
帰路の途中、 道端の自販機で買った白桃エキス入りの天然水が
渇ききった少女の小さな喉を心地よく潤した。
「……」
これまでは栄養面よりも単に 「甘味」の方を最重要視し、
糖度の高い缶飲料ばかりを口にしていたのだが
今日のように激しい訓練後は寧ろ水分補給を目的とした
糖度の低いアイソトニック・ウォーター等方が飲み易いし
また美味であるというコトが最近解ってきた。
その自分の両脇でも長身の美男子二人が、
同じようなラベルのスポーツドリンクを口に運んでいる。
互いに交わす言葉は少ないがそれでも、
奇妙な爽やかさに充たされた静寂の帰路だった。
「それじゃあ、ボクはここで」
夕風にシャツの裾を揺らしながら、花京院が静かに言う。
そして夕闇に陰る交叉路の方へと足を向けた彼を少女の声が呼び止める。
「いいの? ホリィ、おまえの 「分」 も用意しちゃってるわよ」
意表を突かれたように淡い茶色の髪を揺らしながら振り返る花京院とは裏腹に、
少女の顔は素っ気ない。
実は今日の訓練に出向くとき、花京院も合流する事を承太郎の母親である
ホリィに伝えた時、それならば彼も一緒に夕食へ招いて欲しいとの旨を
彼女から言付かっていたのだ。
無論訓練の方に夢中に成りすぎて、今の今までスッカリ忘れていたのだが。
「……本当、かい?」
別段少女の事を疑っているわけではないが、
何の脈絡もない唐突な申し出だったので
花京院は反射的により信頼性のある人物の方へと是非を問う。
「……」
問われた人物は件の剣呑な視線のまましばらく押し黙っていたが、
やがて淡い嘆息と共に口を開き、
「……やれやれ、 “アノ女” の考えそーな事だ」
と誰に言うでもなくそう呟く。
シャナに言伝を頼む辺り、後の展開を充分に予想している。
おそらく自分が頼まれても、 「自分で言え」 と素っ気なく突っぱねたコトだろう。
この、妙な処で勘が冴え、先を見越す洞察が鋭いのは我が母親ながら
見事だと褒めるべきなのだろうか?
しかし、そんな気が微塵も起きないのは何故だろう。
「……」
不承不承の面持ちのまま、学帽の鍔で視界を覆う無頼の貴公子を後目に、
少女の胸元から荘厳な声があがる。
「奥方からの深謝に絶えぬ心遣い。|粛 々《
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