第二部 WONDERING DESTINY
CHAPTER#2
SCARLET MIRAGE
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一つの壁を越え、新たなる領域に足を踏み入れるコトの出来た歓び。
今までも同じような体験が無かったワケじゃないけれど、
“誰かと一緒に” ソレを成し遂げたのはこれが初めて。
想うようにいかず苛ついて、傷ついて、当たり散らして、
何かメチャメチャな今日一日だったけれど。
でも、悪くない。
まるで、悪くない。
ソレは、きっと。
目の前の “コイツ” が、ずっと見護ってくれていたから。
「……」
無口で、無愛想で、不器用で。
でもいつだって、 自分のコトを何よりも大切に想ってくれていた、
“アノ女性” と同じように。
私を、信じてくれていたから。
金色の斜陽が映す神秘的な姿を見上げるようにして、
少女は彼に視線を注ぐ。
その彼女の胸元で、一人喪心する王の姿が在った。
(マティルダ……)
比類無き紅世の王、 “天壌の劫火” アラストール。
その深遠の裡で鮮やかに甦る。
熾烈なる紅蓮の焔を背景に神聖な純白の衣を纏った、
一人の、聖女。
“ソノ者” が、今生の刻に行使した、極絶なる究極戦闘自在法。
精鋭なる重剣士と凄絶なる狂獣、至純なる妖精に霊妙なる呪術士他
在りと在らゆる幻想世界の住人を具現化して混成された、焔の一大千軍万魔。
『騎士団』
その 「一体一体が」 通常のフレイムヘイズ等足下にも及ばない程の力を有し、
更にそのスベテを完全に支配下に置いていた超絶無比なる『能力』 に比するならば、
たったいま少女の生みだした小さな存在などは
大海を前にした小波の如き存在に過ぎない。
だが、しかし。
その存在の小さな姿は、否応無しにアラストールの心中を揺さぶった。
力は微弱で構成も細小で在ろうとも。
その存在感は、そして真紅のゆらめきは。
“彼女” の創り出したソレと全く同じだったのだから。
(……)
その。
極大なる炎の魔神の胸中を、一人の王の純粋な想いを、
知り得る者は誰もいない。
ソレは、紅世で生まれた一人の男と、 現世で生まれた一人の女、
その二人以外決して触れるコトを赦されない、
この世で二人だけのものだったから。
(……)
彼女の在りし日の姿を。
紅蓮の吹き荒ぶ戦場でその 『能力』 を揮っていた勇姿を。
止め処なく溢れる記憶の奔流の中で想い起こしたアラストールは、
やがて一つの事実に辿り着く。
たった今気がついた、一つの 『真実』 に。
(我の力を受け継いでいる以上。我の存在を身に宿している以上。
その炎の 「属性」 が永きに渡りソレを行使してきた
“アノ者” に剴切しているというコトは、充分に考えられる。
故に行使する自在法
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