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第二部 WONDERING DESTINY
CHAPTER#2
SCARLET MIRAGE
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成功させる” とは想わなかった」
翡翠の美男子がその琥珀色の瞳を見開き、自分のある一点を凝視している。
「!?」
 死 角(ブラインド)になっている長い髪を背後に()けて、
見入った視線の先。
 見慣れた自分の、 左肩口。 
 その上で、静かに動く存在が在った。
(!!)
 その外貌は、まごうことなき鳥の形容。
 しかし、その頸から下の躰の造りは、紛れもない人間のソレ。
 背から脚元まで拡がる深紅の両翼を外套のように身に纏い、
その所為で雌雄の区別が付かない “鳥人” が。
 周囲に紅蓮の燐光を厳かに振り撒きながら、
少女の右肩の上に、ただ在った。
「……」
 殆ど夢の中に居るようなあやふやな心地で、
自分の左肩を止まり木にしている存在に、少女はそっと右手を差し出す。
(……)
 少女に留まっていたソレは、 まるで意志が在るかのようにソコから軽やかに跳躍し、
外套のような両翼を大きく展開してその裡に多量の空気をはらみながら、
フワリと差し出された掌の上に着地する。
 そして。
『KU……UU……WAAA……』
 鋭い鉤形の嘴を微かに開き、産声のように小さく()いた。
 まるで、たったいまこの世に渡り来た、
新生の紅世の “徒” で在るかのように。
「あ……ッ!」
 今日一番の輝きを以て、無頼の青年に嬉々とした表情で向き直る少女。
 件の青年は少女にしか解らないほど小さな、
しかし他の誰よりも優しげな微笑をその口唇に浮かべ、
「フッ、まぁ初めてにしちゃあ、巧くいったンじゃあねーか?」
クールな風貌の中にも緩やかな色を仄かに宿し、 そう告げる。
「私もッ! 自在法にこんな使い方が在るなんて想いもしなかった!!」
 慮外の出来事に、喜悦満面の表情で白金の青年に頷く深紅の少女。
「まぁ取りあえずは、その “サイズ” を自由に換えられるようにするのが
今後の課題ようだな。 『スタンド使い』 にしろ “グゼノトモガラ” にしろ、
相手をするにはチョイとばかり背丈(タッパ)が足りねーようだぜ」
「ウン!」 
 相も変わらずの冷静で論理的な素っ気ない応答だが、
今の少女に取ってはソレが真夏の夜風よりも爽やかに感じられる。
 そうして表情を輝かせる少女の傍らで、
「ボクのハイエロファントも、最初から今のような体型(サイズ)ではなく
子供のように小さい姿から始まった。
『スタンド』 には固有の形体のまま姿を変えないモノと、
本体の 「成長」 に合わせて共に姿を変えていくモノと2パターン在る。
どうやらシャナ、“君のは” 後者らしいね」
翡翠の美男子が爽やかな声で言う。
 先刻の悲嘆にくれた想いなど端から存在していなかったかのように、
澄やかに晴れ渡る少女の心。
 
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