第二部 WONDERING DESTINY
CHAPTER#2
SCARLET MIRAGE
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の男だけは諦めていなかった”
先刻の、みようによっては冷淡な受け答えも、
散々尽くしてみて少女が諦めるのならソレで良し、
もし諦めなければ何か別の可能性を “共に模索する” という
二段構えの心算だったのだろう。
何よりも無駄だと解りつつもその仕儀を少女に教授したのは、
誰よりも彼女という存在を尊重してのコト。
どのような事でも、ヤってみなければ解らない。
どんなコトでも、ソレを真に願うのなら。
その想いを否定する権利は、 この世の誰にもないという
アノ男なりの思惟に拠るものだった。
(……)
おそらく。
最初から自在法のコトを口にしても、この少女はきっと聞き入れなかったであろう。
ソレは似て非なるモノ、 第一戦いもせずに敗北を認めるコト等、
少女の一番嫌厭とする処なのだから。
(む……う……)
先刻、空条 承太郎という男を買い被っていたと
落胆しかけたアラストールではあったが、
その承太郎の 『真価』 は実際に値踏みしたモノよりも
遙かに 「高値」 であったコトに(不承不承ながらも)気がついた。
この男は、解っていた。
少女の願いも、想いも、何もかも。
“その為に” どうすれば良いのかさえも。
「……」
自分の想像以上に解っていたというのが、なんとなく面白くない処ではあるが。
「それじゃ、やってみる」
心底滅入った表情も何処へと。
疲労の色も流した汗の痕のみとなった少女が壮気に溢れた風貌で、
アラストールの頭上から明るい声で言う。
二人の若き異能の遣い手は、遠巻きに彼女の様子を見護るようだ。
(……)
自分が長考に耽っている間、少女はいつのまにかその場を移動していたようだ。
先述の二人が、あらん限りに己の能力を揮っていた処。
鞏固な天然素材の石畳が、
絶え間の無い幽波の拳撃、蹴撃とで抉り起こされ、
翡翠の晶撃で砕き尽くされた凄惨なる大地。
これまで歩んできた幾多の戦場と引き較べてみても
なんら遜色の無い破壊の中心部にて。
少女は、 静かにその真紅の双眸を閉じる。
「……」
今度は、最初から勇ましき喊声を挙げるコトはしない。
その代わり神経を研ぎ澄まし、精神を極限まで集中させる。
そして。
意識を己の存在の裡へと、 より深く潜行させる。
自在法を行使する際の、 最も重要な仕儀の一つ。
想像力の収斂。
(……)
その少女の脳裡で、 朧気に浮かぶモノ。
心象に揺れるまだ視ぬ幽波紋の幻 像。
まずは、 燃え盛る灼熱の炎。
その渦巻く紅き波濤が創り出す幻 影。
人型のようにも視えるが、
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