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STARDUST唐eLAMEHAZE
第二部 WONDERING DESTINY
CHAPTER#2
SCARLET MIRAGE
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承太郎は仕方なくその楽しみを先送りにする。
 黄金に光る夕陽(せきよう)が、その怜悧な風貌を照らしていた。
「さて、こんだけヤりゃあちったぁ頭に昇った血もスッキリしたろ?
ヤるだけヤってみた。でもスタンドは出ねぇ。
それじゃあ、“そーゆー時は一体どうするンだ?”」
「え?」
 ふと我に返ったように無頼の青年を見上げる少女。
 てっきり 「諦めろ」 という答えを無言のままに
語りかけられているだけだと想っていたのに。
 でもソレとは違う、全く予期していなかった言葉を目の前の青年は口にした。
「オメーは、今までオレらの想像もつかねーような修羅場を何度も潜って来たンだろ?
テメーの思い通りにいかねーなんてこたァ、一度や二度じゃあきかなかった筈だ。
“そんな時” オメーは一体どうしてきた? 潔く 「諦めて」 ハイ降参か?」
 いつになく饒舌に、眼前の少女へ答えの解りきった質問を問い続ける青年。
 その彼の問いに対し、心中で夢想するように応じる少女。
(……)
 そんなコト、在るわけない。
 そんな風に少しでも考えたら、今日まで生きてはこられない世界だった。
 どんなに煌びやかな真名も。
 どれだけ輝かしい戦歴も。
 ほんの一瞬の油断で、スベテは灰となる世界。
 その後には、存在の痕跡も遺らない世界。
 そんな修羅の(ちまた) で、自分はどうしてきた?
 アノ時。アノ時。アノ時。
 どうして、きた? 
(!!)
 脳裡を駆ける、閃光。
 そして行き着く、確信。
「自在……法……?」
 殆ど無意識に等しい状態で、少女の口唇からひとりごとのように零れた言葉。
「ようやく “ソコ” に行き着いたか」
 ソレに、目の前の青年だけが両腕を組んだまま反応した。
「……」
 まるでいま白昼夢から醒めたかのように、眼前の青年を見上げる真紅の少女。
 その彼は、夕陽の影響で神秘的な煌めきを裡に宿らせたライトグリーンの瞳で、
剣呑に自分を見据えている。
 見放されたと、想っていた。
 少なくとも、この 『能力』 に関しては。
 自分でも、認めたくなかったから依怙地(いこじ)に成っていただけで、
でも本質的には諦めているのとほぼ同義だったのに。
 でも、この目の前の彼は、自分の願望(ねがい)を見捨ててなどいなかった。
 縋っても、頼んですらもいないのに、自分の願望(ねがい)を叶える
「可能性」 をちゃんと考えてくれていた。
 恐らく、すげなく自分に背を向けたアノ時から。
「――ッ!」
 夕日の残光のみならず、鮮やかな朱を差す少女の頬。
 なんだかさっきとは別の意味で、涙まで出てきそうだ。
 真紅の双眸から透明な雫が零れないように、俯き(まなじり) に力を込める。
 その少女に対し
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