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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百三十五話 波紋
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貴族たちがメルカッツ提督が不満を持っているだろうと思ってもおかしくない。それなのに彼は狙われなかった。

ヴァレンシュタインは彼を軍の宿将として遇し、メルカッツ提督もそれに応え、若い司令長官を献身的に補佐している。この二人の間に隙があるようには見えない。

一方ローエングラム伯は副司令長官だがその地位に満足しているようには見えない。司令長官に隙があれば取って代わろうとするだろう。周囲はそう見ている。

さらに周囲から見ればヴァレンシュタインにとってローエングラム伯は厄介者で扱いに困っているようにしか見えない。何処かで彼に遠慮している。彼が何時までその遠慮を続けるのか……。

そのことが貴族達に付け込む隙があると思わせた。ローエングラム伯は孤立しており、周囲からは浮いている。それがどれだけ危険か本人は分かっていない。

ミューゼルの姓を名乗っていた時から彼は孤立していただろう。しかし、軍での階級が低かった時はそれほど問題にはならなかったと思う。階級が上がってからはヴァレンシュタインが何かにつけてサポートしている。そのため孤立する事の危険性を十分に理解していない……。

「伯の周囲はどうです」
「?」

伯の周囲か……。考えていると司令長官が呟くように言葉を発した。
「ローエングラム伯が門閥貴族に与する事は余程に追い詰められない限り先ず無いでしょう。門閥貴族もそのあたりは理解しているはずです」

「……」
「おそらく疑心暗鬼を生じさせそれを利用しようというのが主目的でしょうが、利用するのは門閥貴族だけとは限らない」

司令長官は文書を手にとっていたが、見てはいなかった。少し眉を寄せ、何かを見据えるような表情で話し続けた。

門閥貴族だけとは限らない……。なるほど、伯の周囲にもその噂を利用する者がいるとヴァレンシュタインは考えている。彼が真実恐れているのはそちらか。いや、貴族達の中にもそれを期待する者がいるのかもしれない。

噂を利用するものか……。伯の周辺でこの噂を利用するもの。ジークフリード・キルヒアイス、カール・ロベルト・シュタインメッツ、パウル・フォン・オーベルシュタイン……。

パウル・フォン・オーベルシュタインだな、切れるとは聞くがあまり良い噂も聞かない男だ。フェルナー准将とも接触したと聞いている。どうやらもう少し注意する必要があるようだ……。



帝国暦 487年10月 6日   オーディン 宇宙艦隊司令部  アーダルベルト・フォン・ファーレンハイト


第三十七会議室に宇宙艦隊司令長官、副司令長官、各艦隊司令官が集まった。いずれ門閥貴族達との決戦が起きるだろう。そのための作戦会議だ。それが行なわれるという事は門閥貴族の暴発は近いと司令長官は見ているのかもしれない。

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