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英雄伝説〜菫の軌跡〜(閃篇)
第18話
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ゼは手紙を取り出してリィンに見せた。



「それは……この前俺が送った手紙か?あ、そうか。ノルド高原に行った時の土産を一緒に受け取りに来たのか?一応、現地の可愛らしい装飾品を買ってあるんだが……」

「ほ、本当ですか!?―――じゃなくて!手紙の最後の部分です!」

リィンが自分の為にお土産を購入した事を嬉しく思ったエリゼだったがすぐに自分の目的を思い出して気を取り直し、手紙の最後の部分をリィンに読むように強制した。



卒業後は軍に行く可能性が高いだろうし、そうでなくても家は出るつもりだ。その前に父さんと母さんには親孝行がしたいと思っているからそのうち相談に乗ってくれ。―――それじゃあ、またくれぐれも身体には気を付けて。



リィン・シュバルツァー



「あ………………………………」

手紙の最後の部分を読んだリィンは呆けた後複雑そうな表情で黙り込んだ。

「”そうでなくても家を出る”ってどういうことなんですか……?父様と母様に親孝行って……どうして改まって言うんですか?」

「……………………………」

「まさかとは思いますけど……家を継ぐつもりがないとか、そんなわけありませんよね……?」

「―――そのまさかだ。俺はシュバルツァー家を、男爵位を継ぐつもりはない。」

エリゼの問いかけに答えに一瞬詰まったリィンは決意の表情で答えた。

「!!」

「当然のことだろう?そもそも俺は養子で、血の繋がりなんてない。お前が将来、婿を取って男爵家を継ぐのが筋のはずだ。」

「そ、そんなのおかしいです!たとえ血の繋がりがなくともシュバルツァー家の男子は兄様ただひとり……帝国法でも養子の家督相続はちゃんと認められているはずです!」

「それは大抵、引き取られた子が”しかるべき血筋”だった場合だ。……俺は違うだろう?」

「…………あ…………」

「12年前――――ユミル領主である父さんが拾った吹雪に埋もれていた”浮浪児”……自分の名前以外は覚えておらずどういった出自かもわからない……そんな子供を養子にして迎えたばかりに父さんは社交界のゴシップの的になった。常識外れの酔狂だの、よりにもよって”隠し子”だの……『高貴な血を一切引かぬ雑種を貴族に迎えるつもりか!』なんて難癖をつけた貴族もいたらしい。そして父さんは、そういった雑音が疎ましくなってしまって……ユミルから出ず、滅多に社交界に顔を出さなくなってしまった……」

「………………」

リィンの話をエリゼは辛そうな表情で黙って聞き続けていた。



「これ以上、俺はシュバルツァー家に迷惑をかけたくない。さすがに貰った性まで返すのは難しいだろうけど……それでもお前達の将来に迷惑をかけるのだけは避けたいんだ
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