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ラインハルトを守ります!チート共には負けません!!
第四十六話 イゼルローン要塞に帰ります・・・・。
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水の幻想的な揺らめきを見ているような不思議な気分になる。フィオーナは立ち上がり、エステルの敬礼を受けて答礼した。

「どうしましたか?」

 フィオーナは平素部下に優しい。威張り散らしたりせずに、真摯な態度を持って接してくる者には彼らを尊重する態度をとる。その逆に対しては毅然とした態度をとるが。エステルはその前者で有った。

「ご依頼されていた資料をレポート化しました」

 それは開戦前にフィオーナが依頼していたイゼルローン回廊付近の主要戦場予測図一覧リストにかかる詳細な宙域図であった。ヴァンフリート星域は含まれていない。それには間に合わなかったし、この次の会戦についてはまた別の場所で行われるであろうとフィオーナは思っていたからだ。
 フィオーナはパラパラと、しかしすばやく目を通し、確認していく。その間エステルは黙っていたが、傍目にも緊張していることが分かる。その心配は杞憂であった。彼女は想像力はあまりないものの、決められた仕事はきちっと手ぬかりなくこなしている。今回の宙域図についても、一目見るだけでまるでそこに実際にいるかのような錯覚さえ起こすほどの出来栄えだった。

「ご苦労様でした。ありがとう」

 フィオーナは微笑んで、そのレポートを受け取った。エステルが肩の力を抜いたのがフィオーナの目にうつった。

「よかったら、紅茶を飲みますか?」

 フィオーナがカップをしめしながら尋ねた。

「いいのですか?あの、私は――」
「あなたの当面の仕事は私の補佐だとグリンメルスハウゼン子爵閣下から伺っています。その仕事が一段落したのですから、休憩にしましょう。ずっと力を入れているのも疲れますよ。どうぞ座ってください」

 では、お言葉に甘えて、失礼いたします、とエステルは腰を下ろした。貴族令嬢らしさが出る優雅な座り方であった。フィオーナは新しいティーバックを二つ取り出すと、それぞれのカップに入れ、お湯を注いだ。

「はい。気を付けてくださいね。熱いですよ」

 エステルは恐縮したようにカップを受け取った。グリンメルスハウゼン艦隊に配属になり、エステル・フォン・グリンメルスハウゼンが自分の下に就くと聞かされたフィオーナは、これもアレーナの差し金なのかと思ったが、顔には出さなかった。人を見る前から判断するのは早計であるし、愚かである。
 そして、フィオーナは一目彼女と会って、安堵した。才能はあまりなさそうであるが、実直で貴族令嬢らしい高慢さはどこにもない。多少おどおどとしているところはその白面の美しさを陰らせているが、ためしにいくつかの仕事を与えてみると、決められた仕事を順序を決めてきちんとこなすだけの能率さを持っている。

 つまり堅実な副官なのだ、とフィオーナは思った。ヤン・ウェンリーに対するフレデリカ・グ
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