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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百三十三話 華やかさの陰で……
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というのは事実だ。軍人なら誰も否定しないだろう。
「如何でしょう、楽しんでいただけているでしょうか?」
声をかけてきたのは、アントン・フェルナーだった。その声に周囲が緊張する。
彼がローエングラム伯の幕僚、オーベルシュタイン准将に接触するだけではなく、フェザーンのルビンスキーの部下にも接触したのは皆が知っている。周囲のアントンに対する評価は人当たりは良いが油断できない男だ。
「楽しんでいるよ、アントン」
「随分と楽しそうに見えましたが、何のお話ですか」
「アントン、他人行儀な言い方は止めて欲しいな。私達は親友だろう?」
エーリッヒのその言葉にアントンは少し苦笑すると
「じゃあ、そうさせてもらおうか。ところで何の話だったんだ」
と問いかけた。
「ああ、コオロギとゴキブリの違いについて話していた」
エーリッヒの言葉にアントンがまた苦笑して問いかけた。
「コオロギとゴキブリ?」
「そう、コオロギは鳴き声で多少の可愛げを表すが、ゴキブリはしぶといだけで御婦人方の嫌われ者だとね」
おどけたようなエーリッヒの言葉に何を言っているのか分かったのだろう、アントンは失笑して “まあ、それは、なんと言うか” などと言っていたが、結局また失笑して話が続かなかった。
「何か私達に用かな、アントン」
「少し向こうで話したいんだが、どうかな」
アントンは少し離れた場所を指して、エーリッヒを誘った。
その言葉が周囲に緊張を引き起こす。だがエーリッヒはまるでその緊張に気付かないようにアントンに答えた。
「そうだね、私も卿と話したいと思っていたんだ。ただ、誰か一人同席してもらってもいいかな」
「もちろん構わない。こちらもアンスバッハ准将が同席する」
一瞬だが、エーリッヒとアントンが視線を交差させ、互いに苦笑した。
「窮屈なものだね、二人だけで話をすることも出来ないとは」
「同感だが、仕方ない」
「ロイエンタール提督、申し訳ないが同席してもらえますか」
「承知しました」
エーリッヒはロイエンタール提督を誘うとアントンの後ろを歩き始めた。
帝国暦 487年10月 4日 オーディン ブラウンシュバイク公爵邸 オスカー・フォン・ロイエンタール
司令長官とともにフェルナー准将の後ろを歩く。少しはなれた場所に一人の軍人が待っていた。見覚えがある、軍刑務所でブラウンシュバイク公とともに居た男だ。あれがアンスバッハ准将だろう。
アンスバッハ准将は軽く目礼してきた。こちらもそれに答礼する。四人で向かい合うように並ぶとフェルナー准将が話し始めた。
「参ったよ、エーリッヒ。随分ときつい毒をボルテック弁務官に盛ってくれたな」
フェルナー准将の言葉に司令長官は笑顔を見せながら答
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