Side Story
少女怪盗と仮面の神父 24
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」
「なっ……!?」
「貴女が長年捕まらなかった理由の一端もここにあります」
盗みに気付いた貴族や護衛達が慌ててシャムロックの影を追いかけても、素早い足で振り切られ。
怪しい人間を割り出そうと自領を奔走したり、近隣の領主に捜査の協力を申請し、承諾を得て、どうにか盗品の足取りを掴めたとしても。
必要な手続きを踏んでいる間に、肝心な目撃者兼当事者が国外で殺されて品物も失くなっているのだから、以降追跡する手段は皆無に等しい。
あらかじめ各領境の関所で荷物検査を強化しても、貴族の所有品一覧表が役人達や警備員に託されているわけではないので、商人達が確かな身許さえ証明できるなら、問題なく迅速に越境できてしまう。
かと言って。
国境だろうと領境だろうと、高級品の持ち出しを規制する法案や条例案が認められる筈もない。
そんなことをすれば、財政面で自らの首を絞めるのは必定なのだから。
そして、貴族達の注意が盗品と怪盗の動きに傾いている頃。
一般民に戻ったシャムロックはといえば、一次産業用の道具をできるだけ多くの店で時間をずらしながら少しずつ仕入れていた為、買い物客としての不自然さはあまりなく、生産関係者の買い付けだと思えば、マーマレードの匂いも店員達の記憶に目立った形では残らなかった。
「このように、シャムロックが盗んで国外へ流し、イオーネさん達が証拠と足取りを消し去る。ある意味共犯だったのですよ。貴女方は」
「そん、な……そんなっ!!」
限界まで見開いたミートリッテの目がアーレストの顔を捉えて、離れ。
再び楽しそうに剣を交え出したマーシャルとイオーネの顔を追いかける。
『自覚は無いでしょうけど、お前にはいつもお世話になってるのよ。私達』
出会い頭にイオーネが放った、意味不明な言葉。
あれは、盗品の横流しを指していたのか。
(違う……、奴らに流してたんじゃない! 商人達に盗品を売ってたのは、国内で処理して万が一アルスエルナ人の手に収まってしまったら、その人が真っ先に疑われると思って……地方領主の権限が及ばない、一番近い外国がバーデルで……、だから……っ!)
『せっかく勤労の報奨として頂いた品物だけど、田舎者にはこんな高級品、とてもじゃないが畏れ多くて使えない。かといって国内で手放して彼の方の縁者に見咎められるのも申し訳なく、恐ろしい』
バーデルの言葉で辿々しく呟けば、大抵の商人は買い取りを申し出る。
無論、小娘如きには判るまいと侮られ、値段は真価の半分程度。
だが、元は貴族が集めていた品物ばかり。
半値であっても、領民への還元には充分な額だった。
偽りの商談が成立した時に浮かぶ表情は、これでほんの少しでもみんなを助けられると、安堵が
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