102話 黒犬
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だったがトウカが刺されなかっただけ……いや。そんな事は言っちゃいけねぇよな……」
ハワードさんが膝をつく。傲慢で驕り昂って、一番大切な人を失った人間の嘆き。集まってきた街の人々の涙から、チェルスさんの慕われようと人柄が、はっきりわかる。
だというのに。
”賢者の子孫”の死をもう、直接には……リーザスの塔の記憶を入れて三回目になってしまった僕は、悲しいとは思えるのに……悲しさよりも、自分の無力さや、迂闊さ、それから……またかという思い。そういうことに囚われてしまっているみたいで、自分に自嘲せざるをえなかった。
目覚めたトウカは、俯いて、……彼の遺体に手を合わせ、長いこと祈っていた。なんでも、杖を取り合っていた時はまだチェルスさんは亡くなっていなかったらしい。だから魂を取り戻せるかも、と。……嗚呼。
・・・・
「……せめてものお礼って、あの人、すごい人だったんだね……本当は」
「ええ、そうね。……マヒャドもベギラゴンもすっかり使えるみたい。これからレオパルド……ラプゾーンを追うのに役立つわね」
場所変わって、いつもみたいに戦闘中。とはいえなんだか魔物が少なくて、だからこうやってお喋り出来てるんだけどさ。なんだか……少ないから早く倒せるんだけど、前より明らかに強くなってるような……?今までも魔物は強くなっていったけど、ちょっと強くなりすぎ。数の暴力よりましだけどさ。
うーん、こればっかりは考えたって答えが出なさそう。神の領域だ。ラプゾーンは倒せたとしてもその思考の理由を理解出来る日は来そうにないな。
ん?本当の姿になる前に倒してしまうつもりだけど、強くなったって私たちも強くなれば良いって話だよ、エルト!暗黒神なんて強そうな敵……戦わない方がいいのは分かってるけど、滅してみたいじゃない!仇討ちさ、めためたにしよう!
にしても秋風が涼しくていい感じだ。木々はすっかり紅葉して景色も新鮮。残暑も過ぎ去って、冬寸前ってね。旅の始まりは蝉のうるさい夏の地域だったよね。じゃあトロデーンは今頃残暑見舞いの季節かな?
冬越しの教会というところで一休みしてから更に行ったところで洞窟が見えてきた。あれを超えたら確か、冬の世界。雪に閉ざされた氷の世界だ。あっちにいる七賢者の子孫の方、どうか私たちがたどり着くまで生き延びていてほしい。
本音を言うならレオパルドをのせるぐらい強い賢者がいてもいいと思うんだけど……っ、そういえばギャリングさんって強盗に遅れをとる存在じゃなかったから、ダメだったっけ。どんどん魂を吸収し強くなるラプゾーンに……私の力、どこまで通用するのかな。腕相撲なら負けない自信あるんだけど。
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