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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百三十二話 バラ園
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いてきてくれる人達がいます。その想いを裏切れません」
「……」

「それに……」
「それに? いかがした?」
「自分の所為で三百万人死にました。そして自分は帝国を守るため一千万人殺しました。もう逃げられません」

「逃げられぬか。辛いの……」
「はい……」

「帝国は滅びる。門閥貴族は肥大化し、互いに勢力を張り合い始めた。政治は私物化され、帝国は緩やかに腐り始めておる。いずれ帝国は分裂し内乱状態になり、存在しなくなると思うた」
「……」

「そちの言う通りよ、帝国は滅ぶ。であるのに皇帝からは逃げられぬ、地獄じゃ……」
「陛下……。陛下がローエングラム伯を引き立てたのは……」

「そうじゃ。ローエングラム伯ならば、予を地獄から救ってくれるだろうと思った。あれはゴールデンバウム王朝を滅ぼすであろう、しかし銀河帝国はあれの元で新しく生まれ変わるに違いない……」
「……」

「じゃがそちが現れた。そちが新しい道を示してくれた。嬉しかった。そちにとっては迷惑かもしれんがな」
「……」

「すまぬの。予があれの野心を煽ったようなものじゃ。それなのに止めることが出来ぬ。そちに苦労をかけてしまうようじゃ」
「陛下……」

声が湿っておるの。泣いておるのか、ヴァレンシュタイン。いや、泣いておるのは予も同じか……。先程からどうもバラの華が良く見えぬ……。

「予はそろそろ戻らねばならん。国務尚書が心配するからの。そちは、いま少しバラを見ていくが良い。たまには良かろう」

予はヴァレンシュタインを残し歩き始めた。バラ園の出口で振り返る。バラの華に囲まれたヴァレンシュタインの姿が見えた。遠目にもバラの華が良く似合う、黒のマントも良く映える。いかんの、また涙が溢れてきた、折角の風景が台無しになってしまうではないか……。



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