第一部 PHANTOM BLAZE
エピローグ 〜BEYOND THE WORLD〜
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かといってその存在を見落としたわけではなく、
真紅の液体で白い喉を潤す。
組まれた脚の上に、軽い衝撃。
同時に湧き上がる、無邪気で明るい少年の声。
「DIOサマァァァァァ――――――――――――ッッッッ!!!!」
脚の上に、上品な臙脂色のスーツを着た
波打つ金色の髪を携える十代半ば少年が
黄金の双眸を嬉々とした表情で覗き込んでいた。
「こ、小僧ッ!? 貴様ッ!? またッ!」
「……」
その背後で怒髪天を衝くヴァニラ・アイスの凄まじい気配を察知したのか、
DIOは背を向けたまま軽く片手を挙げ制する。
「!」
ヴァニラは、ただそれだけの所作で歩みを止め、
一度剣呑な表情のエンヤに振り向くと、
主の意図を感じ取り不承不承押し黙る。
傍らでは氷像のような美少女が珍しく、
不快感を露わにした伏し目でDIOに抱きつく
少年を見据えていた。
「……あ……あ……あ……あ……の……? あの……?
お……お……お……お兄……様……?」
唐突に挙がった、静かに空間を流れる少女の声。
いまDIOに抱きついている少年と全く同色の、
豪奢な金髪の先端が大人びた螺旋状にくるまった美少女が、
大量の冷や汗を空間に飛ばしながら焦燥していた。
無数のリボンをあしらった淡い撫子色のドレスを身に纏い、
ソレと同色の鍔広帽子で美しい金色の髪が飾られた、
まるでフランス人形のように可憐さ極まるその美少女が、
直ぐにドレスの裾を摘んで瀟洒にDIOの元へ駆け寄り、
頭に被った大きな帽子を両手に取って深々と頭を下げた。
「統世王様ッ! し、し、し、失礼の段! 心からお詫び致します!
ですからッ! どうか! どうか!
「罰」 ならこの私 めに! どうか! どうか!」
今、星形の痣が刻まれた首筋に両手を廻して抱きつく少年と、全く瓜二つの容貌。
わざわざ 「双子」 だという説明が不要なほどに似通った、
まるで合わせ鏡のような存在。
「フッ……相も変わらず、気苦労が絶えないようだな? “ティリエル” 」
DIOは心蕩かすような甘い声でその青い瞳をきつく閉じ、
大量の冷や汗を飛ばしながら真っ赤な顔で頭を下げる
美少女に語りかける。
「顔を上げろ。いつものコトだ。特に気にはしていない」
「ハ、ハ、ハ、ハイ……ッ!」
青の双眸をキツく閉じながら “ティリエル” と呼ばれたドレス姿の美少女は、
頭を下げた姿勢のままでそそ、とDIOの元から離れる。
その紅世の美少女、ティリエルの胸中で湧きあがる感情の渦。
(あぁ……! 本来なら……
その真名 『愛染他』 足るこの私の存在からするなら……ッ!
お兄様がこの私を差し置いて他の者に抱きつくコトなんて、
絶対に絶対
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