第一部 PHANTOM BLAZE
エピローグ 〜BEYOND THE WORLD〜
[29/33]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
された大理石の噴水から粒子状に迸る流水。
その透明な雫の飛沫が、光のプリズムと成って彩虹を創り出していた。
今までは、特に気にも止めなかった光景。
今までは、その全てが色褪せていた筈の風景。
それが、一体。
何、故?
自分でも理解不能な心中の動悸に、少女は大いに困惑する。
(な、に……? コレ……?)
見慣れた風景、“だった” 筈。
寧ろ際限なく増殖する人の波に、疎ましさすら抱いていた。
そう。
“今までは”
どれだけ強大な紅世の王を討滅したとしてもソレは、
次なる討滅への通過点。
当然、何か護り抜いたという実感も在る筈もなく、
またその余裕も無く、次なる戦場を追い求めて、
人混みの中を漂流するように彷徨い歩いていた。
人と関わらず、交わらず。
始まりを求め、終わりを求め。
戦いながら、ただずっと、一人で歩いていた。
ソレでいいと想っていた。
どこまで行っても、同じなのかもしれない。
いつか終わりが来るのならそれでも良い。
明日自分の存在が終わりを告げたとしても、
“そういうものだ” と割り切るだけだ。
何故なら、自分は、
“フレイムヘイズ” だから。
もう人間ではない存在だから。
だからいつだって、目を背けてきた。
穏やかな春の陽光の中。
眩しい夏の旭日の中。
静粛な秋の落日の中。
森厳なる冬の斜陽の中。
本当に楽しそうに、嬉しそうに笑い合う、人々の姿を。
意識的に、視界から遮断してきた。
決して、心、囚われぬように。
そんな人々の笑顔等、自分を切り刻むだけの存在だったから。
どれだけ多くの人達が笑っていたとしても、
“もう人間ではない” 自分にはその喜びが解らないのだから。
そしてそれを分かち合う者達も、
“かつて人間で在った自分を” 覚えてはいないのだから。
では。
それでは。
“今、は?”
そこで、シャナは立ち止まった。
「……」
アノ時と全く同じ、穏やかな春の陽光、早春の、風。
ソレを、今は、その頬に、全身に感じ取る事が出来る。
フレイムヘイズの 「使命」 のみが 「討滅」 の責務だけが
自分を充たしていた時には、決して、感じる事がなかったモノ。
「……ッ!」
アスファルトの上に佇む自分の脇を、自分よりも小さい子供達が走り抜けていった。
自分達と同じく学校の帰り道なのか黒いランドセルを背に抱え、
その手に玩具のカードらしきモノを手にし何やらよく解らない単語を発しながら
それぞれはしゃぎ合っている。
幼い子供らしい無邪気な笑顔を、その顔いっぱいに浮かべて。
その周囲を、たくさんの人達が歩いている
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ