第一部 PHANTOM BLAZE
エピローグ 〜BEYOND THE WORLD〜
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を丸くして自分を見る二人の孫に、
ジョセフは満面の笑顔で言った。
「やれやれ。呑気なジジイだ」
「やれやれね。でも、気持ちを切り換えるには、丁度いいかも」
その三者の様子を穏やかな表情で見守っていた花京院は、
「それじゃ、ボクはこの辺で。
また、空条、シャナ」
そう言って立ち去ろうととする花京院をジョセフが制する。
「何言っとる? 遠慮はいらん。花京院君。君も来なさい」
そう言ってその太陽のような笑顔を中性的な美男子に向ける。
「え、でも、ボクがいてはお邪魔に」
「来なさい」
口ごもる花京院に、ジョセフは再び満面の笑顔でそう言った。
「……ッ!」
不意を突かれたように花京院は一瞬絶句するが、すぐに。
「ハイ……ありがとうございます。ジョースターさん」
感慨を含んだ声でそう返した。
「フッ……」
シャナの胸元で、アラストールが仄かに微笑を浮かべる。
この男は、人間で在る我が盟友は、
知らず知らずの裡に他者の心に入ってくる。
相手に微塵の警戒心も抱かすコトはなく。
そしていつの間にか、一つに溶け込んでしまう。
それが少しも不快ではなく、寧ろ安らぎに近い感情すら想起させる。
それは己が同体であるフレイムヘイズの少女も、
“紅世の王” で在る自分すらも例外ではなかった。
アノ時。
炎禍渦巻く紅蓮の封絶の中で 「偶然」 この男と出逢わなければ、
自分は今でも 「人間」 という存在をこの 『世界』 という
巨大な存在の付属物程度のモノだと軽視していただろうし、
その分身である少女は、いつまでも人間らしい心を芽生えさせる事もなく、
共に血風吹き荒ぶ凄惨な修羅の道を歩み続けるのみだっただろう。
ソレは、少女が自分で決めた事。
そして、自らが少女に示した道。
その事に、間違いが在ったとは想わない。
しかし。
果たしてソレは本当に 「最善」 だったのだろうか?
少女自身が強く望んだ事とはいえ、
悪い言い方をすれば少女のその気持ちに安寧して
“フレイムヘイズのみの道を” 示し続ける事が、
果たして本当に 「正しかった」 のだろうか?
ソレで、この少女は、 “シャナ” は、
本当に 「幸福」 なのだろうか?
いつのまにか胸中に芽生えていた、今まで考えた事もない一つの疑問に、
紅世の王 “天壌の劫火” の想いは惑う。
“幸せ、よ”
「!」
本当に、唐突に。
炎の魔神の裡で、ひとつの声が甦った。
遙かな、悠久の刻を経た現在で在っても翳りのない、
ソレどころかより神麗な色彩を伴って聴こえる、
何よりも、掛け替えの無い存在。
その、 『最後の』 声。
嘗て、一人の女がいた。
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