第一部 PHANTOM BLAZE
エピローグ 〜BEYOND THE WORLD〜
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風に靡く前髪に手を当てて深いため息を付く。
そのモノ言わぬ骸と化した 「二人」 の周囲に、
たくさんの女生徒達が一様に驚きの表情で脚を止めていた。
その前方では件の「三人」迄もがその歩みを止め、
互いに顔を見合わせ二言三言言葉を交わしている。
「……」
吉田 一美は、その遙か先に位置する人物を凝視していた。
特殊なデザインの学生服に身を包んだ、勇壮なる青年の姿を。
同時に心の裡で湧き起こる、得体の知れない精神の渇望。
華奢な彼女の躰の裡に、そんな凄まじいモノが存在しているとは
信じられない位の激しい炎が、少女の想いを狂しく灼き焦がす。
どうして?
こんなに迄 「彼」 のコトが気になるのだろう?
まともに会話をした事も、朝の挨拶すらも交わした事がない筈なのに。
でも。
記憶の何処かに 「彼」 がいるような気がして。
そしてその彼が、懸命に自分の為に何かをしてくれたような気がして。
どうしようもない。
でも、ソレは。
いつ、何が、どこで、どのようにして起こったのか?
どうしても思い出す事が出来ない。
記憶の中の 「映像」 に何か紅い 「靄」 のようなモノがかかっていて、
ソレは記憶の中の 「映像」 をビデオのノイズのように覆い隠してしまっていて、
そして消えてしまう。
『真実』 は、余りにも遠過ぎる。
忘れてしまった。
何か、とても、大切なコト。
忘れて、しまった。
絶対に、忘れちゃいけないコトだったのに。
「……ッ!」
再び見た視線の先。
桜花舞い散る空間の向こう。
彼が。
空条 承太郎が。
「自分を」 見据えていた。
どこか人間離れした、神秘的な光を称えるライトグリーンの瞳で。
「ぁ……ッ!」
想わず、いますぐに彼の傍に駆け寄りたい。
そういう狂暴な感情が、耐え難く迫り上がってくる。
邪険に扱われても構わない。
無視されたって気にしない。
でも、ただ、すぐ傍に。
“隣にいる 「彼女」 と同じようにッ!”
そのとき。
次の彼の行動がなければ。
吉田 一美は、本当に彼へ向かって駆け出していたのかもしれない。
しかし、空条 承太郎が取った行動は。
ただ無言で彼女から視線を逸らし、己の背を向けるというもの。
「……ッッ!!」
ソレが、明確な 「拒絶」 の意を示していた。
“オレの 「傍」 に来るな”
言葉には出さずとも、彼はハッキリとそう言っていた。
その行為で。その態度で。
そして、余りにも大きなモノを背負った、広く淋しいその背中で。
その、残酷とも言える 「選択」 の本当の 「意味」 を、
知り得る者は誰もいない。
ソレは彼が、少女をこれ
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