第一部 PHANTOM BLAZE
エピローグ 〜BEYOND THE WORLD〜
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もう何もいう事が出来ず、咄嗟に部屋から飛び出していた。
だって、「その後」 の自分の顔は、
とても他人に見せられるようなモノじゃなかった筈だから。
どこをどう走っているんだが解らないまま、
動物のプリントが入った寝間着のままフレイムヘイズの黒衣を捺し拡げ、
渡り廊下の縁側から屋根の上へと飛び移った。
だって、“誰も来ない場所が” そこしか思いつかなかったから。
その屋根の最上部で。
蓮の彫刻の入った役瓦に囲まれて。
そのフレイムヘイズの少女は、
小さな両膝を抱え声を押し殺して、泣いた。
何故だか、涙が止まらなかった。
哀しいワケじゃない。
でも。
次々に涙が溢れて止まらない。
自分が何で泣いているのかも解らない。
でも、ただ、一つだけ。
“いいな”
そう想った。
“人間って、いいな”
そして。
その誰にも見つからず、昇っては来ない空条邸の屋根の上で、
フレイムヘイズの少女は、その小さな肩を震わせ、
声を押し殺して泣き続けた。
その瞳を “灼眼” よりも真っ赤にして。
いつまでもいつまでも、泣き続けた。
まるで、たった今産声をあげたばかりの、
嬰児のように。
【3】
「何ニヤついてンだ? 妙なヤローだな?」
「!?」
突如、頭上から来訪する冷然とした声。
少女の見上げた視線の先で、件の青年が剣呑な視線で自分を見据えていた。
どうやら、無意識の内に思い起こしていた記憶の「映像」に
不覚にも理性のタガが緩んでいた自分は、
包み隠さない満面の笑顔のままで二人の間を歩いていたらしい。
心中の肯綮を不意に突かれた少女は
そのまま件 の如く顔を真っ赤にして、
「う、う、うるさいうるさいうるさい! 別にニヤついてなんかないッ!」
お決まりの台詞を長身の青年に返した。
「ニヤついてたじゃねーかよ」
「してない!」
「あぁそーかい。じゃあ “そーゆーコト” にしといてやらぁ」
「うぅ〜〜〜、どーしていっつもおまえはそーやって
引っかかるコトばっかりいうのよッ!」
顔を更に真っ赤にして息む少女を、隣の中性的な美男子が
まぁまぁと笑顔で諫める。
その、見ようによっては微笑ましい光景を、遠巻きに眺める幾百もの視線。
ほんの数メートル隔てたその三者の背後には、
目測で100は降らない大人数の女生徒達が後を追っていた。
その理由は言わずもがな、
周囲の状景を無視して無理矢理己にクローズアップさせてしまう
長身の美男子二人である。
例え傍らにいられなくても構わない、
その二人と帰り道を共有するだけで彼女達は幸せなのであった。
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