第一部 PHANTOM BLAZE
エピローグ 〜BEYOND THE WORLD〜
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うがないわけだから。
(ただ 「その後」 不覚にも気を失ってしまい学園の 「修復」 を
アラストール任せにしてしまった事は本当に申し訳ないと想ったが)
でも、自分が覚えていない事でも 「良い事」 は別に在った。
その時の事を想い出す度に何故か勝手に顔が綻んで、
少し面はゆい気持ちになるけれど。
実は、「アノ後」 自分は――
己の「器」から限界を超えて存在の力を絞り尽くした
その極限をも超えた疲労とダメージの為、三日三晩眠りっぱなしだったらしい。
そして、「波紋」 で傷の治療をしてくれたのはジョセフで
着替えや全身の至る処に巻かれた包帯を取り代えてくれたのは
ホリィ(慈愛に充ち充ちた 「聖女」 のようだったとはアラストールの談)だったのだが、
その後、熱を持った爆炎の裂傷を氷漬けの冷水で浸したタオルを絞り、
ソレでずっと患部を冷やしてくれていたのは承太郎であったらしい。
彼と共にずっと自分の傍にいたアラストールの口から
(不承不承の面もちで)語られたコトに拠ると、
冷水にその手を何度も何度も浸し、
ソレを何百回、何千回と繰り返した為承太郎の 「手」 は、
最後の方は紫色に変色し皸 でボロボロになって血が滲んでいたらしい。
“ソレにも関わらず”
彼は、自分が小康状態を取り戻すまでロクに睡眠も取らず
三日三晩付きっきりで看護を続けていたそうだ。
自分も戦いの疲労とダメージが在るにも関わらず。
ずっと、傍らで。
自分が傷の痛みとソレの発する熱で呻くごとに、
タオルを宛う箇所を逐一変えて。
ジョセフも何度か助力を申し出たそうだが
彼は 「ジジイはスッ込んでろ」 「ジジイは寝てろ」 の
台詞のみで取り合わなかったらしい。
そして、暁 の曙光が部屋に射し込む明け方、
ようやく発熱が治まり自分の頬に仄かな赤味が差し
寝息が穏やかなものに変わった事を確認すると、
彼は一度口元を笑みの形に曲げ
“後は任せたぜ。アラストール”
ソレだけ言って部屋を出ていったそうだ。
脳裡に思い起こされる、彼の手。
目を覚まし 「その事」 をホリィとアラストールから聞かされた自分は、
二人が止めるのも聞かずパジャマ姿のまま寝室から飛び出し
広い屋敷を迷い子のように駆け廻って、目に付いた扉は手当たり次第に開けて
ようやく茶室でジョセフと将棋を打っている承太郎を発見した。
呆然と立ち竦む自分にその時彼は、
まるで “自分が何もしていなかったように”
「よぉ、 起きたか寝坊助」 とソレだけ言った。
いつものように、無愛想な表情と口調で。
その視線の先、両手に血の滲んだ包帯が巻かれた
彼の 「手」 が眼に入った時。
自分、は。
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