第二章
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「中には変な人も多い」
「そうですやん、やっぱり」
「変な人一杯いますで」
「大阪は特に人多いですし」
「このお店にも変な人結構来ますやん」
「それであれこれ言うても」
「本人には言ってませんし」
流石に三人共それはしない、あくまで店の裏でそうした客の陰口を言って盛り上がっているだけだ。それでだ。
三人はあらためてだ、牧村に言った。
「これ位ええですやん」
「そうそう、客商売やったらありますやん」
「普通ですやん」
「言葉は誰に聞かれているかわからない」
また言った牧村だった、表情も口調も変わっていない。
「それもわかることだ」
「まあまあ、仲間内で話してるだけで」
「目立つ場所でも他の誰にも話してませんし」
「別にええっちゅうことで」
「そう言うのならいい」
牧村は三人に鋭い目のまま返した。
「ただ、言った」
「はい、牛女ですか」
「牛女が来て襲いかかってきますか」
「そうしてくるんですな」
「そうだ、そうした存在もいる」
妖怪と言われる類はというのだ、こうしたことを話した後でだ。
牧村は黙々として仕事に戻り三人もウェイトレスの仕事に戻った、三人共仕事は真面目で営業スマイルも忘れない。だが。
店が終わって明るい挨拶をして店を出るとだ、三人で夕刻の難波の道を歩きつつ話をした。丁度御堂筋の辺りをだ。
賑やかなその道を歩きつつだ、苺は莉世と薫に言った。
「牧村さんって変な人やな」
「ああ、苺もそう思ったんやな」
「うちもそう思ったわ」
莉世と薫も笑って返す。
「妖怪がおるとかな」
「それが襲い掛かって来るとか」
「変なこと言うわ」
それこそというのだ、左右を行き交う人や店達は見ないで彼女達だけで話をしている。
「顔はええのにな」
「背は高いしスタイルもええのに」
「特撮俳優みたいやのに」
「残念やな」
「妖怪がおるなんてな」
「そんなんおるかい」
三人で笑って話すのだった。
「それも牛女って何や」
「あれ神戸やん」
「六甲におるやろ」
何でも頭が牛の女が生まれ資産家の家の中で密かに囲われていたらしい。頭が人身体が牛の件という妖怪がいるがこれの正反対のものであろうか。件は予言をするというがこの牛女もそうしていたのかも知れない。
「何か空襲で外に出て六甲に逃れてな」
「そこで生きてるっちゅうけどな」
「神戸やで」
そこだというのだ。
「それやったらな」
「大阪にいるとか信じられんわ」
「とてもな」
絶対にというのだ、三人共。
「何でそっから来るねん」
「電車で来るんか」
「車でか」
「頭が牛やからめっちゃ目立つやろ」
「人が見たら大騒ぎやぞ」
「出てたまるかいな」
こうした話を笑いながら話す、そして。
三
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