第一章
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牛女
星野苺は大阪で生まれ育ち地元の高校に通いつつマジックという喫茶店でアルバイトをしている。この店は本店は神戸の長田区八条町にあるが店長の親戚が二号店を大阪の難波において経営させているのだ。
苺は店で友人で同じ高校に通っている工藤莉世、涼風響と共にウェイトレスとして働いている。苺は小柄で黒髪を頭の上の方でツインテールにしていて自分の名前である苺のアクセサリーが付いた紐で束ねている。大きく丸めの目で形のよい口と鼻、あどけない顔立ちである。莉世は茶髪をポニーテールにして赤い細い布で締めている。ポニーテールというが団子に近い感じで大きな目と大きな口で背は苺より高い。響きは根元を黒のまま残した金髪で小さな目と四角い顔に大きな唇を持っている。背は苺と莉世の中間程だ。
苺はロリ系のファッションで莉世は派手目、響は如何にもギャルだ。三人共明るく接客もいいので客からは評判がよかった。
だがこの手の仕事の常かだ、よく店の裏では客達について笑いながら話をしていた。
「さっきのお客さんないわ」
「ほんまや、店の中でやらしい本読むとかな」
「そんなんあかんやろ」
「喫茶店やしな」
「ムード守れっちゅう話や」
「ちょっと引くわ」
こうしたことを話すのだった。
「さっきの兄ちゃん下品過ぎたし」
「何か仕草がな」
「あれもないわ」
「あと昨日のおばはん化粧濃過ぎ」
「服も若作りで」
「あんなんあかんわ」
「そうしたことを思うのはいいがな」
休憩しつつ自分達が煎れた紅茶をのみながら客の陰口で盛り上がる三人にだ、神戸の本店から今日はマスターがいないということで助っ人に来た大学生の牧村来期が言った。背が高い寡黙な感じの青年である。
「しかしだ」
「口に出すのあきません?」
「こうやって話すの」
「それはあかんていうんですか」
「言葉は出たらだ」
牧村はそれならというのだった、三人に。
「戻らない、そして世に漂ってだ」
「何かなるんですか?」
苺は牧村に顔を向けて彼に問うた。
「一体」
「自分にかかる、それにだ」
「それに?」
「この辺りではこうした話がある」
牧村は苺だけでなく莉世と薫にも話した。
「人の陰口をしていると牛女が来て襲われてどうかなるとな」
「牛女って」
牧村に言われてだ、三人共だ。
まずは言葉を止めてお互いに顔を見合わせてだ、三人て手を横に振って笑って牧村にこう返したのだった。
「そんなんありませんで」
「そうですよ、牛女って」
「あれ神戸ですやん」
「ここで大阪やさかい」
「牛女出ませんで」
「何でここまで来るんですか」
「妖怪を甘く見ないことだ」
あくまで冷静にだ、牧村は三人に言うのだった。
「決してだ」
「決してって」
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