第一部 PHANTOM BLAZE
CHAPTER#END
戦慄の暗殺者FINAL 〜LAST IMPRESSION〜
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突にそこで途切れた。
静かに重ねられた、少女の 「口唇」 によって。
「ッッ!?」
星形の痣が刻まれた、その首筋に絡まれた細い腕。
風に揺れて靡く、深紅の髪。
甘く痺れるような、火の匂い。
そし、て。
少女の、淡く潤った可憐な口唇が。
承太郎の、色素の薄い口唇に触れていた。
互いの血と血で塗れた、
口唇と口唇とが穏やかに触れあう、
鮮血の、口づけ。
これから、この世界を覆い尽くそうとしている巨大な 「闇」 と、
共に闘っていく事を誓う、何よりも尊く何よりも神聖な行為。
「―――――――――――――ッッッッ!!??」
少女の、その余りにも突然の行為に、
胸元のアラストールは戸惑いを隠すこともなく驚愕を漏らす。
しかし、その事に、当の本人達は微塵も気づいていない。
承太郎にはシャナしか。
シャナには承太郎しか。
その存在が視えていない。
他のものは全て、その意味を無くし、
二人以外の存在は時空間の遙か彼方にまで消し飛んでしまった。
「……」
そして、完全に想定外の事態に、
少女のその行為に、両眼を見開いて絶句する 「彼」 に向かって
ゆっくりと口唇を離したシャナは。
一度、向日葵のような満面の笑顔をその顔いっぱいに浮かべ、
そし、て、静かに瞳を閉じた。
「シャナッッ!!」
精神の支えがなくなりズシンッと重くなるスタープラチナの腕の中、
だらりと垂れ下がった少女の首筋からさらさらと零れ落ちていく真紅の髪。
ソレが、焼けた鉄が冷えるように元の黒い色彩へと戻っていく。
少女の生命の消耗を象徴しているかのように。
咄嗟に伸びた手が、彼女の左胸に触れていた。
「……」
微かだが、鼓動は在った。
少女の温かな、体温と共に。
確かに、そこに存在していた。
生命の息吹。
命の鼓動。
少女が、いま此処に居るという印 。
ただそれだけの事実が、何故か無性に愛しい。
一度消えたら、もう二度とは戻らない 『真実』 故に。
「気ィ失っただけか……無理もねぇな……」
シャナの左胸からそっと手を離した承太郎はそう呟き、
そして学帽の鍔で目元を覆う。
正直、何故か鼓動は異常な迄に高鳴り、
体温の急上昇に伴う多量の発汗作用が背に感じられたが
敢えてソコは意図的に無視した。
理由は、考えたくもなかった。
取りあえず、“今は”。
「…………様々な事象が同時に折り重なった為、この子も動転していたのだろう。
つまり 「我」 を喪失した状態での事。あまり深く考えるでない」
別に何も訊いていないのに
何故か異様にムッとした口調でそう一人語ちるアラストールに、
承太郎は後ろめたさを隠す意味も込め少しだけ|邪《よこしま
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