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第一部 PHANTOM BLAZE
CHAPTER#END
戦慄の暗殺者FINAL 〜LAST IMPRESSION〜
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「……」
 もう、死に逝く運命(さだめ)は変えられない。
 それだけの 「罪」 を、彼は既に犯してしまっていたから。
 でも、それでも。
 せめて、せめて最後の最後の(とき)くらいは、
安らかな気持ちを与えてやりたかった。
 誰にも気にされず、一人淋しく散って逝く位なら。
 例えどんな罪人でも、死の尊厳を与え、
静かにその生命の終焉を看取ってあげたかった。
 それだけは、偽りのない「本心」だった。
(……)
 甘い、ライムオイルの匂い。
 遠い追憶、嘗て一度だけ、その香気に包まれたコトが在るような。
 そしてその香気にと共に聴こえてくる、(こだま) のような声。
 誰かの、呼ぶ声。
 誰か、が。
 その声に誘われるように、フリアグネ、は、
もう二度と開かないと想われた双眸を、微かに開いた。
 ぼやける、微睡みようなその視界に、映る姿。
 ソレは次第に線を結び、像を成す。
(……)
 その視界の殆どが闇に閉ざされつつある瞳に、映った姿。
 たった一人の、人間。
 震えるフリアグネの口唇から漏れる、
気流に掻き消える程か細い、儚き声。
 花京院にしか聞こえない、一つだけの声。
 か細く震えるフリアグネの手が、そっと左胸の部分に触れる。
 花京院は、寄せられたそのフリアグネの手を強く握り返す。
「……」
 震えるその手で、フリアグネは花京院の頬をそっと撫でる。
 その存在を、確かめるように。
 微かに開かれたフリアグネの双眸に向け、
花京院は優しい微笑を浮かべ、穏やかな口調で語りかける。
「大丈夫。何も、心配しなくて良い。
ボクは、此処にいる。どこにも、行かないよ。
だから、今はただ、安らかに」
「……」
 もうこれ以上何も感じる事は無いと想っていた自分の凍てついた心に、
温かなナニカが甦ってきた。
 これが、人間の温かさ?
 これが、人間の温もり?
 解らない。
「人間」ではない “紅世の徒” で在る自分には。
 何も。
 でも、それでも、構わない。
 抱かれたその肩に、繋がれたその手に、花京院の温もりを感じながら、
フリアグネは最後に、本当に安らかに微笑(わら)った。
「フリアグネ……」
 花京院は、(うれ)うように左手を強く握り返した、
温もり、消えて、しまわぬように。
 やがて、虚ろに現世の境界を揺蕩(たゆた)っていたフリアグネの躰の線が、
その輪郭を消失()くしていく。
 ソレが人の形を失って大量の純白の炎となり、
一つの 「鳥」 の形と成って天空へと翔け昇り、一斉に爆ぜた。
 元なる場所へ。
 全てが、そう在るべきだった処へ。
 (かえ)っていった。
「……ッッ!!」
 その、音もなく舞い堕ちる白い|欠片《
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