第一部 PHANTOM BLAZE
CHAPTER#24
戦慄の暗殺者] 〜Final Prayer〜
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リアンヌの脳裡に、まるで水晶で出来た万華鏡のように甦る、
最愛なる主との、光輝くような幾千の日々。
柔らかな雨の降る深い森の中、自在法の加護を借り
二人共に清浄な空気の許を歩いた事。
寒い冬の最中、二人で暖炉を囲みたくさんの 「宝具」 に囲まれながら
くだらない事で笑い合った事。
時に些細なことやつまらないことで、ケンカをした事。
シルクのベッドの上で愛する主の手に抱かれ、
その胸の上でお互い無防備な表情のまま、一緒に眠った事。
どれも、みんな、大切な想い出。
他にはもう、何もいらないくらい。
その全てに、感謝したかった。
最愛の主が、自分を誕生させてくれなければ、
そんな大切な 「想い出」 が、生まれる事もなかったのだから。
生きているという事の素晴らしさに、気がつくこともなかったのだから。
だから、逃れようのない絶対の破滅を目の前にしても、
マリアンヌの心はこの世の何よりも澄み切っていた。
恐怖は、なかった。
絶望も、感じなかった。
不安な事は全て消え去り、ただただ静かな気持ちでいられた。
在るのは、最愛の主との、輝くような 「想い出」 だけ。
そして、その主が与え育ててくれた、何よりも暖かな心だけ。
(新しいマリアンヌと……どうか……どうか……
いつまでもいつまでもお幸せに……)
遠い追憶の中、そして、遙かな未来の中。
最愛の人は、いつでも笑っている。
例え自分が誰よりも遠い場所に行って、
その姿を感じる事は出来ないとしても。
いつでも。
いつまでも。
ソレが、幸せ。
きっと、幸せ。
誰よりも、何よりも。
この 「世界」 で、一番大切な事。
意志を持つ燐子の脳裏に、最後に映る存在。
それは、彼女最愛の主の、汚れのない笑顔。
涙は流さなかったが、きっと、
マリアンヌは泣いていたのだろう。
そして、静かに奏でられる、終末の鐘の音。
(さようなら……大好きな……大好きな……)
“私のご主人様”
白く染まる、視界。
その中でマリアンヌは、
脳裏で微笑むフリアグネに笑みを返した。
自分が出来うる、精一杯の笑顔で。
最愛の主は満面の笑顔と共に、
優しい声で自分の名前を呼んでくれた。
そう。
淋しくはない。
誰も淋しくはないのだ。
この 「世界」 に生きている者は。
一人残らず、誰も。
ヴァァァァッッッッグオオオオオオオオオオオォォォ
ォォォォォ―――――――ッッッッッッッ!!!!!!!
白い、閃光。
彼女は、“燐子” マリアンヌは、「消滅」 した。
己の生命の全てを。
己の存在の全てを。
白
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