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渡り鳥が忘れた、古巣
渡り鳥が忘れた、古巣【D】
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笑顔で喋った。泰弘はMary(メアリー)が、(おし)の、口パクで無く、発音での言葉だったので、驚き、日本語の、上達ぶりにも、感心した。直弘が、黄色の小型ワンボックスカーを、乗降場に回し、皆が乗り込んだ。車内で、Mary(メアリー)が「私、今、泰弘の声、聴こえるよ。(みんな)の声も、聴こえるよ。(かい)が、補聴器を、プレゼントしてくれたの」と言って、(かい)に抱き付いた。「私、日本に来た時、凄く寒かった。ビックリした。今日は、夏だから、フィリピンと同じだね」とMary(メアリー)は、耳で会話が出来る事を、楽しむかの様に、話した。泰弘が「一佳もDREAM(ドリーム)も、大きく成ったね。子供は、成長が早いな」と、一佳とDREAM(ドリーム)の、頭を撫でて、言った。一佳とDREAM(ドリーム)は、6歳に達していた。車内は、終始、和やかだった。古民家に到着した。泰弘は仏壇に線香を上げ、合掌、礼拝をした。仏壇には栄吉、キク、ヨネ、直子の、位牌が在り、部屋の鴨居に、4人の遺影写真が、掛かっていた。その夜、泰弘は、仏壇に飾って在る、フィリピンから持ち帰った、ハガキ大の、EKYYNのワンピースを着た直子の写真を、自分の枕元に、置いた。
帰国後、二・三日して泰弘に、JATCを吸収合併した大手商事会社より、フィリピン支店への、復職の要請が来た。フィリピン支店は、カリスマ東南アジア統括責任者の、泰弘を失い、過度の業績不振に、陥っていた。相川一美は、業績不振の責任を取らせ、解雇したそうだ。泰弘は、自分が安藤家の家族を顧みず、直子を、死に追いやったと、悔いていた。泰弘は、復職の要請を、辞退した。
泰弘は、古民家の縁側に座って一人、庭を眺めていた。秋の安藤家の庭は、紅葉の最中だった。黄昏が、優しく庭を照らし、黄金色の銀杏の葉が、地面に覆い被さっていた。一佳(かずよし)とDREAM(ドリーム)が、山羊を追い回していた。そこには、妻・直子の姿は無かった。軒下に、ツバメが子育てに使った古巣が見えた。雛鳥は巣立って、今頃、両親鳥と一緒に、南の国に居るだろう。何年ぶり古民家だろう?縁側の踏み石の脇に、ひと夏の生涯を終えて、地に戻る、カブト虫が見えた。泰弘には、カブト虫が、自分と同じ、老兵の様に思えた。日が沈んだ。直弘と、MARIA(マリア)と、(かい)と、Mary(メアリー)が、畑やNGO未来の倉庫から帰って来た。7人で一
緒に、夕食を摂った。食後、居間でCD
を聴いた。書棚から、アルバムを、取り出した。それは、妻、直子と一緒に撮った写
真や、安藤家の、絆で結ばれていた、家族写真だった。泰弘の目に涙が流れた。[ナオに逢いたい、逢いたい]それは、泰弘の、仕事に、邁進(まいしん)したが上の、直子や、家族との絆を軽視した、後悔の念と、追憶の涙だった。居間から、夜空を仰いだ。天の川が、
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