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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百二十八話 才気ではなく……
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ンタウ星域の会戦では一千万もの敵を殺しましたが当然その中には中佐の友人も居たでしょう。私は彼女に部屋で休むように、戦闘を見るなと言いました」
「……」
「しかし、中佐は見続けました。最後まで蒼白になりながら見続けた。帝国軍人だから、私の副官だから……。あの時私は……」
「……」
ヴァレンシュタイン元帥は言葉を詰まらせ、首を横に振った。フィッツシモンズ中佐は少し顔を伏せ気味にしながら聞いている。その肩が微かに震えていた。その中佐をメックリンガー提督が切なそうに見ている。
「そしてメックリンガー提督、第三次ティアマト会戦で六百万の兵士を救うため、彼には危険な道を歩ませてしまった。彼は少しも嫌がらずに私の策を実行してくれた。もし、あそこで六百万の兵士が死んでいたら私は自分を許せなかったでしょう。提督には感謝しています」
「それは違います。あの時、閣下は自分の身を犠牲にして私達を守ろうとしました。しかし私達は勝つ事に夢中で閣下の御気持ちに少しも気付かなかった。其処まで我々の身を案じてくれていたのかと思うと……」
メックリンガー提督はやるせなさそうに表情を歪ませ、そのまま視線を落とした。メックリンガー提督の手が強く握り締められている。
「色々、ありましたね……」
ヴァレンシュタイン元帥の呟くような言葉を最後に沈黙が落ちた。三人とも身じろぎもせず沈黙している。
羨ましかった。目の前の三人は強い絆で結ばれている。私には無い。私は貴族の間でも変わり者、可愛げが無いと言われ続けてきた。私と強く結ばれたものなど誰もいない……。
彼らの前で味方を裏切るような事を言った私はヴァレンシュタイン元帥にとってどのように見えただろう。自分の才気に酔った愚かな女、そのためになら味方も裏切る厭らしい女だろうか……。
「フロイライン、内乱が起きた場合私達とともに戦場に出られますか?」
「戦場に、ですか」
「そうです……」
「ですが、私は軍務の経験など……」
「それは心配しなくていいのです。軍を率いる事はありません。幕僚として参加してくれればいい。マリーンドルフ家の次期当主が戦場に立つ、その事に意味があるのです」
人質、だろうか。信用できない私を常に傍において監視する。そう考えているのだろうか。
「……」
「その上でマリーンドルフ伯にも協力をお願いしたい」
「協力と言いますと?」
「政府部内にもブラウンシュバイク公、リッテンハイム侯に味方する人が居るでしょう。当然人手が足りなくなる。マリーンドルフ伯が宮中に出仕しリヒテンラーデ侯を助けてくれれば侯もマリーンドルフ家を信頼するでしょう」
「……」
「マリーンドルフ家の親子が揃ってこちらの味方になった、積極的に参加している。その意味は決して小さくないと思い
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