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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百二十八話 才気ではなく……
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書がたくさん有ってはお邪魔でしょう、その一言です」
「……やはりそうですか」

「あれは言うべきでは有りませんでした。貴女は自分が説得した知人縁者を私のために切り捨てると言ったんです。私に恩を着せるような言い方で、貴女は自分の才気を私に認めさせようとした、違いますか?」

確かにそうだった。目の前の青年に自分を認めさせたかった。目の前の元帥は私とそれほど年も変わらない。それでも、その力量を疑う人間はいない。そして私は何処にでも居る貴族の娘でしかない。

自分が他者に比べ劣るとは思わない。ただ、機会が無かった。自分の力量を示す場が無かった。帝国は女性の地位が低い、私が自分を認めさせるには今回の内乱が最大の機会だと思った……。

「……そうかもしれません」
「今の貴女は危険です。自分を認めさせようとするあまり、やたらと才気を振り回している。そして周りだけではなく自分まで傷付けている。一番拙いのはその事に気付いていない事です」

「……」
「今のままでは、皆貴女を忌諱するようになります。誰にも受け入れられなくなった貴女はますます暴走し破滅します」

「……」
「マリーンドルフ家は危険な位置に居るのです。伯爵領はオーディンから僅か六日の距離にあります。そんな近距離にある伯爵家が信用できないとなったらどうなります」

味方を裏切るようなことを言った私をヴァレンシュタイン元帥は責めている。一度裏切ったものが二度裏切らないという保証は無い、露骨に言わないのは他にメックリンガー提督とフィッツシモンズ中佐がいるからだろう。

「……」
「軍は先ずマリーンドルフ家に向かい、制圧するでしょう。マリーンドルフ家は伸張どころか消滅しかねません」
「……」

ヴァレンシュタイン元帥は一つ溜息を吐いた。そして言葉を続けた。
「フロイライン、今貴女がすべき事は才気を示す事では有りません。覚悟を示す事です」
「覚悟、ですか」

「ええ、そうです。貴女は裏切らない、マリーンドルフ家は裏切らない、私達と一緒に最後まで戦ってくれる、その覚悟です」
「……」

覚悟、その言葉にメックリンガー提督とフィッツシモンズ中佐が微かに頷く。感じるところがあるのだろう。それを見ながらヴァレンシュタイン元帥は静かな口調でを言葉を続けた。

「私はメックリンガー提督もフィッツシモンズ中佐も信じています。この二人に私は背中を預けられる。もし、それで死ぬ事があっても後悔することなく死んでいけるでしょう」
「……」

メックリンガー提督とフィッツシモンズ中佐がヴァレンシュタイン元帥を見ている。強い視線ではなかった、ただ思いの篭った切ないような視線だ。

「フィッツシモンズ中佐は元々は自由惑星同盟の兵士でした。色々と有って私の副官をしています。シャ
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