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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百二十八話 才気ではなく……
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いからといって直ぐ処断できるわけではありません。彼らが実際に失態を犯すまでは無理です。失態を待たずに処断すれば、政府は恣意的に処断を行なったと非難を受けるでしょう。新体制に対する不信を起させるだけです」
「……」

「私は貴女を高く評価しているんです。貴女の力量なら、彼らを制御して失態を起させないように、あるいは庇う事も可能でしょう。連帯を強化することも難しくない……」
「……」

思わず唇を噛んだ。そんな事をするつもりは無い、そう言いたかった。でも何の根拠も無い。私を信じてくれ、その言葉だけで納得するほど甘い相手ではない。何処で間違ったのだろう。

「リヒテンラーデ侯は貴女を許さないでしょう。侯は貴族階級を一掃することにかなり葛藤がありました。でも受け入れた。そんな侯にとって内乱を自家の勢力伸張に利用する貴女は敵です」
「!」

敵、その言葉に空気が一瞬で重くなった。メックリンガー提督とフィッツシモンズ中佐が同情と憐憫の視線を向けてくる。リヒテンラーデ侯が敵に回れば、元帥も同調するだろう。その状態で公文書が何処まで役に立つだろう。

「それが、誤りの一つでしょうか?」
声が掠れているのが分かった。そんな私に元帥は一つ頷くと言葉を続けた。

「そうです。貴女は説得する必要など無かった。ただ、私に自分の知人で頼りになる人物が居る、一度会って欲しい、そう言うだけで良かったんです」
「……」

「後はこちらで判断しました。頼りになる人物なら貴女の人物鑑定眼は評価され、良い人物を紹介してくれたと皆に感謝されたでしょう。マリーンドルフ家は勢力を伸ばすことは出来なくとも信頼を得ることは出来た」
確かにそうかもしれない。しかし私は……。

「焦りましたね、フロイライン。貴女にとって現状は満足いくものではなかった。貴女の能力に比べマリーンドルフ家は、その影響力が小さすぎる。自家の勢力を少しでも伸張させたい、その思いが貴女を誤らせた……」

寂しそうな、哀しそうな声だった。元帥は私を非難しているのではなかった。ただ哀れんでいる。

その通りだった。これほど面白い時代に生まれたのに、マリーンドルフ家は小さすぎる。誰も私達に注目などしない。私は父を愛している、温厚で誠実で誰からも好かれている父。

しかし父の性格ではこの乱世を乗り切るのは難しいだろう。だから私がマリーンドルフ家を守る、より大きく育てる、そう思った……。

もう一つの誤りを聞かなければならない。大体想像はつくが、聞かなければならない……。次の機会のために、もっともそんなものが有ればだが。
「閣下、私が犯したもう一つの誤りとは?」

ヴァレンシュタイン元帥はちょっと困ったような表情を見せたが、言葉を出した。
「もうお分かりでしょう。貴女が言った、公文
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