第十話 親友と往く道
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友に引き戻しておくことは将来のために大きなプラスになる。この数週間敵意を向けられたことなど忘れていいくらい大きなプラスに。
表情を和らげ、大きな息を一つ吐いて怒りの残滓を分解すると、俺は食事を中断して二人に向き直った。声のトーンを優等生を演じる時の声に変え、心底困っているという顔で二人に頼み込む。、
「ありがとう、ブルーノそれにホルストも。正直困っていたところだ。君たちが助けてくれるなら心強い。いや、はっきり言おう、俺がご下命を果たすには君たちの助けが必要だ。頼む、ブルーノ、ホルスト、助けてくれないか」
芝居のようだが芝居じゃない。打算はあるが大げさに、芝居がかって頼っただけだ。
だったが、効果は抜群だった。
「いいとも、アルフ。君からそこまで頼られたのは初めてだな」
「あ、ああ…いいぜ」
「ありがとう。これでご依頼も無事果たすことができる。男爵閣下もお喜びになる」
育ちの良さそうな笑顔を向けて肩を叩いてきたブルーノとばつが悪そうに了承したホルストは以前よりずっとくだけた様子になっていた。
『まっすぐなのも悪くないな』
そして、俺も驚きと同時に半分以上本気の安心感と今までにない大きな感謝を感じていた。上級貴族にコネを作ることが最優先であることは変わらないが、こういう連中と仲良くなっておくのもそれと同じくらいの比重で力を入れていくべきかもしれない。利用するだけの形ばかり、上辺だけの親友でない本当の友を得ることは役に立つだけでなく、楽しそうだ。
「ここでは人の目もある。部屋で話そう」
おそらくはあの悪魔とゆかいなしもべたちが何かしているのだろうが、今はどうでもよかった。
俺は少年らしい感情を振り払うこともせず二人を特別室に案内し、今しがた聞かされたばかりの呆れ果てた依頼を打ち明けた。
「ツィンマーマン男爵のご令息か…大伯父上がこぼしていたね。男爵に相談を受けて何度か家庭教師を貸したけど、貸すたびに怪我をして帰ってきたと」
「あのぶたやろ…うぐっ」
「男爵閣下はそのご令息が幼年学校に出てくる気にさせろ、とさ」
盗聴を警戒したのかホルストの口を押さえたブルーノ──顔見知りなのか、名前を聞いた時の顔はやれやれという表情だった──に俺はもう一度繰り返した。
「期限は?」
「なるべく早く。とは言ってたが明日にも何とかしてほしいみたいだったな、あの様子じゃ」
執事の表情を思い出しながらの俺の言葉にブルーノはなるほどといった表情で頷いた。
新聞室や図書室に保管されている新聞や父上やアルノルト、ブルーノの実家からの手紙、ヘスラー、ガイル経由で送られてくる家宰様からの通信にはここのところ、猛威を振るう『黒薔薇の勅令』に噛み砕かれた家の情報が毎回必ず書かれている。
それらによると爵位返上
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