第一部 PHANTOM BLAZE
CHAPTER#20
戦慄の暗殺者Y 〜Don't leave you〜
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「アノ剣」 で跡形もなく蒸発させろッッ!!」
的確な指示と正確な忠告。
そして、本当に本当に自分の身だけを案じている精神。
その全てが温かな雨露のように、傷ついた躰へと沁みいってくる。
「……」
頬を伝う透明な雫をその肌に感じながら、シャナは哀しいほどの笑顔で頷いた。
何度も。何度も。何度も。
「この階にいる人形を全部ブッ潰したら! オレもそっちにいってやる!!
それまでやられんじゃあねー!! 死んだら殺すぞッッ!! じゃあな!!」
革靴の踵と鎖の擦れる残響が聞こえる。
ソレと同時に再び、何かが爆砕したかのような破壊音。
「邪魔すんじゃあねぇぇぇぇぇ――――――――――――ッッ!!
オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァ――――――――ッッッッ!!!!」
「……」
階下から聞こえるスタープラチナの咆吼に合わせ、
シャナの小さな口唇も微かに動く。
そしてその胸の裡では、先刻の言葉を何度も反芻していた。
何度も、何度も。
(勝手なこと、言って、くれちゃってぇ……
アレは、 “煉獄” は、存在の力を、大きく、消耗する上に、
集中力を、極限まで、研ぎ、澄まさなきゃいけないから、
持続力が、スゴク短い、のよ……
昨日、アノ後、私がどれだけ疲れたか、おまえは、知らないくせに……)
でも、力が、湧いてくる。
もう、何も残ってないと想われた自分の裡に、
それに屈さず 「絶望」 に立ち向かおうとする精神の力、
【勇気】 が。
アイツ、が、たったいま、与えて、くれた。
(……だけど、おまえの、御陰で、ひとつ、良い 「手」 を、思い出したわ……
イヤな、思い出が、あるから、アレ以来、封印、してたけど、
四の五の言ってる、場合じゃない、要は、使いよう、よね……)
「そう、でしょ……?」
少女は、譫言のようにそう呟いて、
大刀を杖代わりにしながら立ち上がる。
「承……太郎……ッッ!!」
そして、二人で見た空に、風貌を重ねて問いかける。
“一人じゃない”
その事実を、シャナは今、何よりも強く実感した。
そう、いま、自分は、決して、
“一人なんかじゃない!!”
ただそれだけの当たり前の事実が、
心に巣喰った恐怖と絶望を跡形もなく吹き飛ばした。
そしてその瞳に、再び灼熱の炎が何よりも激しく燃え上がった。
(逢いたい、な)
穏やかな微笑を口唇に浮かべ、灼きつく躰を無理矢理引き起こしながら、
シャナは純粋にそう想った。
まだ、さっき別れてから、1時間も、経っていないけれど。
でも、逢いたい。
いま逢いたい。
すぐ逢いたい。
因果の、交叉路の、真ん中でッ!
「うぅっ!」
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