Side Story
少女怪盗と仮面の神父 23
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れてしまう。
「残念ですが。貴女がもっと早く気付いていれば、そんな話で済んでいたのですよ、ミートリッテさん」
「! ぶふっ」
両腕を強く引っ張られた。よろけた拍子にアーレストの胸へ、思いっ切り顔面衝突する。
驚く隙も無く背中に回された両腕が体を密着固定し、おまけに足まで絡ませてきた。
これでは神父を叩くことも蹴ることもできない。
「ア……!」
なんのつもりかと口を開きかけて……
「イオーネさん。シャムロックは私が押さえておきますから、早くアルフィンさんを奥へ。複数の人質を長時間一つ所に留めるのは愚行ですよ」
抗議の声と被ったアーレストの言葉で、全身の血が凍り付いた。
(……うそ……でしょ?)
「ええ。……良い子にしてなさいね、アルフィン。お前が大人しくしていれば、あのお姉さんも余計な怪我はしないわ。解るでしょう?」
「…………」
「あはっ。お前は本当に賢い、好ましい子ね。何処かの無能で愚鈍な仔猫ちゃんとは大違い。……連れて行け。殺されたくなかったら手は出すなよ」
アーレストに抱き込まれてる所為で目には見えないが、突然現れた無数の足音と一緒にアルフィンの気配が森林の奥へと消えて行く。去り際、多人数がバラバラに動いてくれたおかげで、アルフィンがどの方角へ向かったのか……耳だけでは追い切れなかった。
「……なんで? あんたは人を助ける仕事をしてるんじゃないの!? アルフィンが何をされたか、しっかりその目で見てたでしょう!? なのになんで、よりによってあんな人達の仲間なのよ!!」
静寂が戻った場で、ミートリッテは一切の抵抗を止め、アーレストに言い募る。
何が不思議なのか、彼は小首を傾げ……ああ、と呟いた。
「イオーネさんとの会話を以て方針を少々変えただけです。彼女達を非難する前に自らの行いを省みなさい、シャムロック。貴女が犯した本当の罪を自覚しない限り、この先も同じ事が際限無く繰り返されますよ」
「!? 本当の罪、って……」
義を銘打ったところで、シャムロックも所詮「賊」だ。徒に税金を搾取する貴族に限定してるとは言え、相手から物を奪い盗るのは絶対悪。貴族達からすれば抹殺したい程度の大迷惑な行為であろうが……他に何があるのか?
(……分からない。でも……)
「神父様」
「はい。なんでしょう?」
「今日ね。とても長い漁を終えたアルフィンのお父さんが、やっと帰って来たんです」
「……そうですか」
「はい。アルフィンはね。お父さんに会える日をずっとずっと波打ち際で待ってました。ご存知の通り、私は怪盗なんかやってるから実際に見かけた回数は少ないんですけど……お父さんが漁に出てる間は毎日欠かさず、無事に帰って来て欲しいと祈りを込めて海岸に立ってるんですって。前の漁帰りでは、船
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