暁 〜小説投稿サイト〜
魔王に直々に滅ぼされた彼女はゾンビ化して世界を救うそうです
第2章『あたたかな手は』
第11話『死徒×戦士×魔法使い』
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り買い取ったりして、他の買い手に『そういう存在』として売りつける人達。……それが奴隷商」

「…………ぇ」

「はいストップ」

 咄嗟に足を踏み出しかけたスィーラの手を、メイリアが即座に掴んだ。
 それでも足を止めようとしないスィーラを、力で振り切られる前に振り向かせる。両腕で肩をしっかりと押さえて、真正面からスィーラの瞳を覗き込む。スィーラはチラチラと奴隷商の方を向きつつも、何かあるのかとメイリアの両眼を見つめ返した。

 メイリアはホッとしたように溜息を吐き、スィーラの肩を掴む手を緩める。

 苦虫を噛み潰したような表情で馬車の方に視線を移し、しかしそのまま目を逸らしてスィーラの手を引く。スィーラの足は今も内側に力を保持していたが、一応はメイリアの誘導に従って足を動かした。
 人通りの少ない路地裏に入り、周囲に人がいない事を注意深く確認する。確認が済むとメイリアは改めてスィーラに向き直り、言葉を吐き出していく。

「本当に人間大好きなのね。――スィーラのそういう所は、とっても良い所だと思うわ。けど、とっても辛いことを言うけれど、後先は考えた方が身のためよ、スィーラ」

「――ぇ、……?」

 ぽかんと、スィーラが面食らったようにメイリアを見つめる。その言葉の意味が分からないと言いたげにメイリアを見つめるスィーラに、しかしメイリアは予測していたように答える。

「別に、『私達には関係ない』だとか『面倒事に首を突っ込むな』だとか、そんな薄情な事を言いたい訳じゃないの。そこは分かっておいて。……けどね、スィーラ。私達が仮にあの馬車の中に捕まってる奴隷の人達を助けたとして、その後はどうするつもり?」

 助けた、その後。

 それは確かに考えていなかったけれど、家族を捜すなり国に預けるなり、色々とあるのではないのか。そんな思考を浮かべたスィーラを見透かしたように、メイリアが首を横に振る。赤い瞳を下に落とし、『どうにもならない』と告げるように。
 その意味が、スィーラには分からなかった。記憶も無ければ知識もない今では頭も悪いが、しかしその足りない頭を絞り出して考えるだけでも幾つか案は出てくる。
 賢いメイリアにこの程度の考えが浮かばない筈がないと、スィーラは困惑を含んだ眼をメイリアへと向けた。

「……あの馬車……ざっと数えて四台って所かな。大きさから考えて、一台に十人以上は乗ってるでしょうね。単純計算で四十人、更に数は前後。……それだけの人の家族を、いろんな所を旅して探す?あの馬車がどれだけの街を巡ったかも分からないし、それじゃ時間がかかり過ぎる。加えてあれだけ堂々と奴隷を連れて行けるってことはね、ここを含むこの(ヴァリア)では奴隷商売が認可──いえ、寧ろW推奨Wされてるのよ。それを襲ったとなったら、
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