暁 〜小説投稿サイト〜
シークレットゲーム 〜Not Realistic〜
異常者
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いかけるように……口に出していた。

 それは、彼のせいではない。

 数多のゲームで数多くのゲームマスターが、≪彼≫の動向を追っていたが……。誰も、彼が≪動く≫時、追いきれないのだ。まるで、全ての監視カメラが見えているように。……位置が初めからわかっているかのように。故に、組織は新規でゲームを行う時、必ずカメラの位置を変更させ、よりカムフラージュ技術を駆使している。

 だが、それでもカメラを破壊されてしまう可能性はある。

 破壊等の行為が過剰に行われると言うのなら、権限を使いそれを阻止する事も出来るのだ。

 それなのに、追いかける事が出来ないのだ。これまでも。――――これからも。


 それは数十分後の事だった。

「ッ!! ば、馬鹿な!! 見失った!?」

 男が勢い良く椅子から立ち上がった。

 余裕をもって、まだ監視出来ていた。無数の眼(カメラ)は、ずっと男を追い続けていた。さっきまで、完璧に姿を捉えていた筈なのに、突如として消えてしまったのだ。


 まるで、煙の様に―――。


 特に怪しい行動をしていたわけでもない。
 ただ、山道を歩いていた、それだけだ。カメラとカメラのエリア切れ目に差し掛かった所で……、突然姿を現さなくなった。周囲の全カメラを、捜索モードに切り替え見続けるが……、何故だか捉える事が出来ないのだ。

「夢中になりすぎるのは、感心しないな……」
「っっ!!」

 あの男を探そうと躍起になっていたその時だった。

「彼を追い続けるなとは言わないがな。……無理だよ。数多の強者が、マスターが追いきれなかったのじゃから……。そこが良い。ゲームとは常に変化を繰り返すものだ」

 コントロールルームに響き渡る声。
 それは、部屋にあるスピーカーから聞こえてくるのだ。声の主は組織の幹部の1人の声。

「は……。そうでしたね。申し訳ございません。つい取り乱してしまいました。」

 男はそう答えて、再びモニターをチェックする。
 確かに、あの男は追えなくなったが、その為に他のプレイヤーを見ないわけにはいかないのだ。今後のゲームプランを考えていかなければならないのだから。

「いやいや。私は、君のそう言うところも気に入っているのだよ。……だが、本当に面白いものだ。あの様な男が現れるとはな。このゲームの歴史は長い。……彼の様にただ強いプレイヤーならば、他にもいたが。……彼の様に≪生きる≫プレイヤーはいなかったと言っていい」

 そう言って、低く笑い声が響き渡る。そして、幹部の男は、過去を思い出していた。


 なぜ、そんな異様な男、異質な男がいて笑えるのだろうか?

 なぜ、死なない男、≪死神≫とまで言われた男をこのまま野放しにしているのだろう
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