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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百二十四話 アントン・フェルナー
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そんな事でエーリッヒが陛下の隠し子だと言っているのか、掛け値なしの阿呆だな。卿がバラ園に呼ばれないのは、卿と話しても詰まらないからだ。それ以外に理由は無い。

「知らぬな。そんな話は聞いたことが無い。大体陛下の御子なら宮中に迎え正式に皇子として遇すればよいのだ。隠す必要など何処にも無い。あの器量なら直ぐ立太子だな」
「しかし……」

そう言うとヒルデスハイム伯は試すような眼で公を見た。エリザベートの邪魔者は、貴方が消すのではありませんか、皇帝はそれを恐れて宮中に入れないのではありませんか、伯の目はそう言っている。

「もし元帥が本当に陛下の御血筋の方なら、これ以上帝国にとって喜ばしい事は無い。帝国は文武に優れた皇子によって一層の繁栄を得るだろうからな」

きっぱりと言い切ったブラウンシュバイク公に毒気を抜かれたのか、ヒルデスハイム伯はモゴモゴと口籠りながら帰っていった。




「お見事です。アントン・フェルナー、感服いたしました」
「フェルナー准将、わしを褒めているのか、馬鹿にしているのか?」
「もちろん、褒め称えているつもりですが」

「閣下、ご安心ください。フェルナー准将には後ほどきっちりと口の利き方を教えておきます。どうやらフェザーンに行って少したるんだようですな」

アンスバッハ准将が怖い事を言っている。もっとも言っているだけだ、目は笑っている。後でシュトライト准将も入れて三人でヒルデスハイム伯の愚劣さを、それに悩まされる公の姿を笑いながらコーヒーを飲むのだ。これが裏の理由だ。

公もそれは判っている。一つ鼻を鳴らすとこちらに話しかけてきた。
「お前達はわしの苦労を少しも判ろうとせん。これでもう昨日から十三人だぞ。毎回同じ話を聞かされるわしの苦労をいたわろうとは思わんのか」

「公爵閣下のご苦労は十分に判っております」
ブラウンシュバイク公はアンスバッハ准将の誠意溢れる答えにまた鼻を鳴らすとこちらに問いかけてきた。

「先程の隠し子云々だが、どう思う」
「あり得ません」

アンスバッハ准将が間髪入れずに答えた。
「ヴァレンシュタイン元帥がエリザベート様の配偶者候補に挙がった時、元帥について調べました。それは有り得ません」

十年間待つ。ブラウンシュバイク公爵家、リッテンハイム侯爵家の基本方針だ。エルウィン・ヨーゼフ殿下は未だ五歳。たとえ即位されても殿下が御世継ぎを得るまで十年はかかるだろう。それに殿下が無事成人されるという保証は何処にも無い。それが根拠になっている。

その間に勢力固めをする。具体的にはエリザベートの婿選びだ。当初、エーリッヒとエリザベートを結婚させるという案がブラウンシュバイク公から出された。いい案だった。

だが子が生まれた場合、父親が平民という事
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