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魔法少女リリカルなのは ViVid ―The White wing―
第一章
三話 昔の話
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た?」
「もっちろん!さっきのノーヴェさんと先輩のスパーリングの話ですよ!」
「お二人とも凄かったです!速いし、正直目で追うだけでも精いっぱいでしたけど……」
ノーヴェの言葉にリオは興奮した様子で、コロナも素故事自嘲気味ながらも矢張り興奮を隠しきれない様子で笑う。その勢いに、寧ろノーヴェの方が圧されてしまうほどだ。
と、一人、真剣な顔で誰も居なくなったリングを見つめるヴィヴィオが目に入った。
「ヴィヴィオ、どうだ?兄貴強かっただろう?」
「うん……すごく……強かった。あんなに強かったんだ……」
ヴィヴィオは少しの間真剣な顔でリングを見つめ続けると、不意にノーヴェの方に向き直り、にっこりと笑った。
「ノーヴェ、ありがとう!」
「ん?」
「私、きっと今日此処に来なかったらお兄ちゃんがあんなに強いんだって、もっとずっと知るはず無かったと思うんだ……だから、ありがとう!」
それは、見ようによっては奇妙とも言うべき感謝だった。
兄の特技を知ること。勿論、知らない事はおかしくは無い。しかし、彼等にとっては数少ない共通の趣味であろうにも関わらず、それを彼女は、他人の手を借りる事によってしか知ることが出来ない。
その感謝は、それほどにクラナとヴィヴィオのかかわりが少ない事を示していた。
「あぁ……今度、稽古でも付けてもらえよ」
だが、何気なく言った言葉で、輝くような笑顔だったヴィヴィオの顔が少しだけ、ほんの少しだけ曇る。
「う、うん!頼んでみるね!」
しかしそれは一瞬で消えると、ふたたび彼女の顔に笑顔が灯った。
やがてチビッ子たちは、三人で相変わらずスパーリングについてワイワイと話しながら、更衣室の中へと消えた。
「…………」
「……?ノーヴェ、どうしたッスか?ヴィヴィオ、喜んでたっすよ?」
「あ?あぁ。そだな。何でもねぇよ……あたしも着替えて来るわ」
「うーッス。外で待ってるッスよ〜」
「おう」
片手を振りながら、ノーヴェは更衣室へと歩き出す。
何でも無いとは言ったが、矢張りノーヴェの中には、先程一瞬だけ曇ったヴィヴィオの笑顔が、チクリと残っていた。
「まだまだ、先は長い……か」
小さくつぶやくと、彼女は更衣室の中へと姿を消した。
こういう所を見ていると最早完全に先生なのだが……まったくもって、何故か素直に認めようとしない彼女には疑問が募る限りである。
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