幕間 悪魔のお仕事
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少し手間だが、食事をしながらでも片付けられる。全部一遍に片づけることも、僕たちが腹が減る腹が減ると騒ぎ立てることにはなるが朝飯前である。あとは皇帝陛下の恩賜として、できあがった眼球を義眼と取り換えれば忠臣、いやさ忠僕パウルのできあがりだ。
諜報員よろしく工作に命をかける悪魔の大活躍物語をメインエベントに据えれば、二十世紀二十一世紀の女学生やら本好きの主婦やらがホームページだブログだに小屋掛けしているオーベルシュタインの恋愛話など上演するよりはよほど観客も新鮮味を感じてくれよう。
「他に御入り用とあれば、農奴の中からでも叛徒の囚人の中からでも探し出して召し連れましょう…これは失礼を!猿人にも等しき叛徒の乱杭歯などお目にかけてはお目の汚れ!」
「かまわぬ。叛徒も逃亡、反逆の重罪人とは申せ皇帝陛下の臣民じゃ。召し出すのに何の不都合があろう。農奴など陛下の御為に入り用とあらば、いるだけ買うがよい。中には土を耕す以外のことができる者もおろう」
「ははっ」
下賤の者が浅知恵を詫びるふうを装って行動にお墨付きと、もう一袋の金貨を手に入れると、ヴィクトールは数か月前幼年学校の応接室から逃げ出したアルフレット・フォン・グリルパルツァー──今頃は貴族の馬鹿息子どもを再教育する仕事に大わらわであろう──よりもう少しゆっくりと、礼節を守って皇妃シュザンナのもとを退出した。
退出に際して皇妃の館の玄関からいきなり消えずにお行儀よく地上車に乗り込んだのは、愉快な僕のハスキーどもの犬使い荒く彼らを使い倒そうとする主人への殺意の視線に恐怖を覚えたのとヴィクトール自身も多少の空腹感を感じたがゆえのことだった。
「さーて忙しくなるぜぇ、ハスキー軍団。しばらくは悪魔を休業して慈善事業だ」
「悪魔はお前だけだばう」
「俺たちはただの犬だがう」
「しゃべるだけの犬だばう」
「立って歩くだけの犬だがう」
「だからお前一人でやればう」
「お前一人でやれがう」
そんな彼の足下を見た犬ども、お行儀よく人間に化けてすましている間に腹を減らした愉快な僕たちが質量ともに上等の食事を要求したことは言うまでもない。
銀河連邦時代の都市の遺跡を探検するスリルを楽しみ、矯正区に隣接する労働力市場で農奴、正確には農奴に落とされた叛徒の軍医を競り落として解放する人道的行為に酔いしれる前に…いや役得を満喫する前に尻をハスキーどもの昼食に持って行かれてもがき苦しむのは、いくら再生自在の体を持つ彼とはいえ願い下げである。
「だーーーーーーーー!!それが主人に向って言う言葉かねこの無駄飯食らいどもーーーー!!」
皇宮の門を抜けるやいなや、ヴィクトールは黒塗りのクラシックカーを古代アメリカ趣味な叛徒の──自由惑星同盟の富豪たちが好んで乗るオープンカーに変身させ、ポ
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