第十四話 それでも姉妹
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桜の見頃はとても短い。紀伊が第七艦隊で初めて出撃して帰ってきた直後にはあんなにも満開だったのに、鎮守府さくら祭りの開催日当日には呉鎮守府の裏手にある河川敷土手の桜はあらかた散ってしまっていた。
急きょ南西諸島方面作戦が発動されたからなのだが、艦娘の中にはそれを残念がるものが少なからずいた。大きな桜の木の下に座って上を見上げている数人の艦娘がいる。陽光が葉桜を通して降り注ぎ、下に敷いた毛氈を柔らかく温めている。
「提督も急だったよね〜。まぁ、上からの命令には逆らえないのかもしれないけれどさぁ。もうちょっとタイミングってものをわかってなくちゃ。」
こういったのは伊勢だった。
「でも、葉桜もなかなかいいと思いますよ。緑とピンクのコントラストってなんだか素敵じゃないですか?私はこういうのもいいと思います。」
と、霧島が言った時だ。どよめきが聞こえた。さっきから度々聞こえるのだが、その原因が何なのかを知っている二人は意に介さなかった。
「まぁ、でも中には桜の見ごろや散りごろなんて全然関係ないっていう人もいるけれどね。」
伊勢と霧島が向けた視線の中心には真っ赤な絨毯が敷かれ、その上に座っている何人かの艦娘がいた。
『日向選手ついにギブアップ!!ですが103個と大健闘です!!戦艦側はビスマルク選手と金剛選手の二人になった!!おおっと!!これで何個目?!赤城選手120個を突破!!加賀選手も119個を完食です!!なおも両者お稲荷に手を伸ばすぞ!!あっ!!ビスマルク選手も負けてない!!猛然と追い上げて121個目を完食!!金剛選手も後に続く!!これに負けじと赤城、加賀両選手もさらに手を伸ばす!!』
鈴谷の実況で行われている鎮守府艦娘対抗大食いトライアルは大盛況だった。お稲荷の山が減っていくたびに、記録が更新されるたびに見物人からは大歓声が聞こえる。
サクサクと白砂を踏む音がして、紀伊が伊勢と霧島のそばにやってきた。両手に大きな風呂敷包みを下げている。
「お、紀伊じゃん。参加しなかったの?」
「わ、私はあまりああいうのは得意じゃなくて・・・・。」
紀伊は困ったような笑みを浮かべた。
「それにこの後榛名さんと一緒に――。」
「あ、そうだよね。演奏するんだもんね。頑張ってね!!」
「ありがとうございます。あ、これ、間宮から持ってきました。足りないかなと思って。」
「ありがとう。わぁ!!豪華!!いいのかな、物資大丈夫なの?」
5段重ねにしたお重箱にはおにぎりや煮しめ、鰻、寿司、から揚げ、卵焼き等様々なご馳走が入っていた。早速伊勢が手を伸ばしておにぎりをつかんだ。
「提督が色々な方面に手を伸ばして集めてこられたんだそうです。それに今日一日くらいはのんびりさせてあげたいとおっしゃっていたそうです。間宮にいらっしゃった妖精さんがそういっていました。あの
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