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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百二十三話 道を切り開く者
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ろうと……」
「……」
「それで、艦の色に合わせるのならマントの色は黒になりますと言ったら……」
「言ったら?」
「それで良いと言われたよ、ワーレン提督」
一瞬の沈黙の後、微かな苦笑が場に漂った。
「参ったな、黒は俺も使いたかったんだが……」
「?」
「いや、その時は俺が元帥になる可能性など無いと思っていたのだ。だから羨ましいとは思ったが、それ以上ではなかった……」
「無理もありませんよ、私も自分が元帥になるなど考えた事は有りませんでした」
皆ビッテンフェルトとミュラーの会話に頷いている。確かにそうだろう、ヴァレンシュタインは特別だ、誰もがそう考えていた。
彼だから僅か六年で宇宙艦隊司令長官になった。彼だから上級大将に元帥になることを許された。我々に許される事ではない……。それなのに、今日ヴァレンシュタインは自分は特別ではないと宣言した。
“臣は平民として最初の元帥かもしれません。しかし最後の元帥ではありません。”
黒真珠の間に流れたヴァレンシュタインの言葉、あの言葉を聞いたとき体に電流が走った。そんなことが許されるのか、何かの間違いではないのかと。
しかし皇帝フリードリヒ四世はそれを否定しなかった。あの瞬間、我々平民にも元帥になる可能性が、帝国軍三長官になる可能性が与えられた。
「司令長官が、元帥府を開くつもりは無い、元帥府に入りたければ自分で元帥府を開けと言われたが、まさか本気だったとは……」
苦笑交じりにルッツが呟いた。
「第五十七会議室だな。司令長官は道は切り開いた、後は自分で歩けと言っている」
「ケスラー提督の言う通りだ。大将に昇進したからといって、その地位に甘んじることは許されん。まだまだこれからだ」
クレメンツの言う通りまだまだこれからだ。これまでは平民であるがゆえに昇進は出来ないと思っていた。しかし、その壁は取り払われたのだ。これからは実力のあるものは昇進し、無いものは止まることになる。これからが本当の勝負だ……。
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